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田中重人 (東北大学文学部准教授)
人文社会総論
1年生対象:2011年度1セメスタ (文学部 基礎専門科目 (入門))
<金4>
[文学部 授業概要(1年次用) PDF]
[当日配布資料 |
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[レポート返却と講評]
日本語教育学 (7/29)
レポート課題
次のふたつの政策のうち、どちらかひとつについて、現在の日本社会においてその政策をとった場合に予測される問題点と、それに対してとり得る対策について述べよ。
- 日本語以外の「公用語」の導入
- 国籍決定における「属地主義」の導入
- →
極端なケースを想定して起こりうる事態を考える問題
- 縦書/横書いずれも可
- 他の人に相談したり意見をもらったりすることがのぞましい。その人の氏名と、それで何が改善されたかを、レポート末尾に「謝辞」をつけて記すこと。
[→ レポート返却と講評]
日本語教育学研究室の紹介
教育目標
- 実践的な教育力
- コースデザインから教室運営まで
- 実習
- インターンシップ
- 科学的研究力
- 方法論の裏づけを持つ調査・実験
- 論理的思考とコミュニケーション
研究内容
- Non-native speaker 対象の効果的な教育方法
- 学習者の第2言語習得過程
- 日本語教師の育成、成長、キャリア
- 日本語そのものの検討
- コミュニケーションの技術
- 異文化間の理解
- グローバリゼーション・多文化状況への対応
- 現代日本社会の多様な姿
田中の研究課題
家族と不平等に関する理論
- 分権的な資源分配システム
- 現代の家族制度
- 家族制度はどこまで可変的か?
- 法学・政治学・社会政策学との対話
統計データによる状況の正確な把握
- 大規模な社会調査プロジェクト
- 「ノイズ」をとりのぞく
- 少数者についての代表性のあるサンプル
自分自身の社会について「知っている」ことをきちんと「説明できる」か?
日本国内の言語状況
- 日本の法体系には、「公用語」の規定はない
- 全国の「公的な」場面で通用する言語は、事実上、日本語(標準語)しかない
- 日本語使用者人口は1億2000万以上と推定されるが、そのほとんどは日本国内で生まれ育った native speaker
- アイヌ語は native speaker としての継承がほぼ不可能な状態
- 琉球語は日本語とのクレオール化が著しい
- その他の少数言語
- 旧植民地からの移民
- 戦後の移民
- 「出入国管理および難民認定法」改正 (1990年) 以降 →「定住者」の増加
- 「集住地域」と「散在地域」
- 自治体によっては、多言語によるサービスを相当程度充実させている場合がある
国籍とその機能
- 「血統主義」「属地主義」とは?
- 「国籍」とはそもそも何か? 日本ではどのようにして形成されたか? (嘉本, 2001)
- 日本国籍を持っているかどうかで何が違うか? → 「人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、我が国に在留する外国人に対しても等しく及ぶ」(最高裁判所 1978年10月4日)
- 国籍と「市民権」(citizenship)
- 国籍とアイデンティティ
出入国管理
日本の出入国管理体制に関する時期区分 (近藤 (2010) を参考にした):
- 植民地主義 (−1945 敗戦)
- 占領期 (−1951 日本国との平和条約)
- 高度経済成長期 (−1970年代) : 「排除と差別と同化」
- 平等と国際化 (1989 国際人権規約批准、1981 難民条約加入)
- 定住と共生 (1990 入管法改正、1991 日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法)
- 多文化共生 (2006 総務省「地域における多文化共生推進プラン」)
現行法による在留資格とおこなえる活動
- 「永住者」「定住者」「特別永住者」:制限なし
- 専門技能職 (特定の職業のみ許可):「外交」「報道」「医療」「技能実習」など
- 就労資格なし:「短期滞在」「留学」「研修」など
「自由」と「平等」の間
人権保障の3層構造
- 自由 (生命・身体・信条・言論・結社・居住・移動・政治活動・ライフスタイル……)
- インフラストラクチャへのアクセス (教育・社会保障・情報・行政サービス……)
- 資源分配の積極的コントロール (cf. 男女共同参画基本計画)
「公用語」問題、「国籍」問題はこれらのどこに位置づけられるか?
文献
- 嘉本伊都子 (2010)『国際結婚の誕生: 〈文明国日本〉への道』新曜社.
- 近藤敦 (2010)「日本における外国人のシティズンシップと多文化共生」辻村みよ子・大沢真理 (編) (2010)『ジェンダー平等と多文化共生』東北大学出版会, pp. 119−151.
資料
国籍法 <http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25HO147.html>
第2条 子は、次の場合には、日本国民とする。
(1) 出生の時に父又は母が日本国民であるとき。
(2) 出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であつたとき。
(3) 日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないとき。
第4条 日本国民でない者(以下「外国人」という。)は、帰化によつて、日本の国籍を取得することができる。〔……〕
第5条 法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可することができない。
(1) 引き続き五年以上日本に住所を有すること。
(2) 二十歳以上で本国法によつて行為能力を有すること。
(3) 素行が善良であること。
(4) 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができること。
(5) 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。
〔……〕
TANAKA Sigeto
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2011年度授業一覧
この授業に関する質問/意見は、田中の個人ブログの2011-09-04の記事
<http://tsigeto.blog.fc2.com/blog-entry-26.html>
で受け付けます。
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