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田中重人 (東北大学文学部准教授)
2013-06-04
東北大学文学部 (2013年度) 現代日本論基礎講読「論文作成の基礎」
第8講 読点の打ちかた (6/4)
[配布資料PDF版]
- [テーマ]
読点の機能と打つべき場所
中間レポート草稿について
- 素材を読んでいない人にもわかるように、内容を説明すること
- 素材の内容の紹介は最初にまとめてしてしまうこと
- パラグラフの構成
- 表現を統一したいときは、検索機能を使うとよい
- 自分の意見と素材内容とが区別できるように
今回の課題
各自の中間レポート草稿から任意の部分を選び、読点の使いかたについて次のことを考える (提出不要)
- それぞれの読点はどのような機能を果たしているか
- 読点を使わずに書き直すことができるか
- 読点を打つべきところで打っていない個所はないか
句点と読点
句点 (。) またはピリオド (.) = 文の終わりに打つ
読点 (、) またはコンマ (,) = 文の内部構造を示すために打つ
- [、 と 。]
の組み合わせ …… 通常の文章 (この授業ではこれを推奨)
- [, と 。]
の組み合わせ …… 官公庁の文章 (の一部)
- [, と .]
の組み合わせ …… 数式や英文を多用する文章 (教科書の用法)
読点の打ちかた
係り受けが遠く離れている場合
- [例文]
これらの図を使って説明すると、学生は、日本文における「主語」の不在を、すんなりと理解してくれる。
遠いほうから順に打つこと。
- [×]
これらの図を使って説明すると学生は日本文における「主語」の不在を、すんなりと理解してくれる。
- [×]
これらの図を使って説明すると学生は、日本文における「主語」の不在を、すんなりと理解してくれる。
- [○]
これらの図を使って説明すると、学生は日本文における「主語」の不在をすんなりと理解してくれる。
文頭の接続語 (しかし、したがって…… など) で、文全体を修飾しているものは、構文木の「根」に係ると考えて読点を打つ
- [○]
したがって、FJH命題については、このアプローチでは証明できない。
- [×]
したがってFJH命題については、このアプローチでは証明できない。
係り受けを示す読点は、「根」に係る文節にだけ打つほうがよい (絶対的な規則ではない)
- [○]
この本は、生成文法について基礎的な知識を持つ読者を対象にする。
- [△]
この本は、生成文法について、基礎的な知識を持つ読者を対象にする。
並列の要素同士を区切る
- [例文]
京都、大阪、奈良に行った。
- [例文]
……能力や学力、あるいは学業成績によって…
- [例文]
技術が進歩し、企業経営の計画性が高まってくると……
並列要素を区切るには、読点以外の記号や接続 (助) 詞も使える。できれば、読点を使わずに済ませるほうが望ましい。
- [例文]
京都・大阪・奈良に行った。
- [例文]
……能力や学力や学業成績によって…
- [例文]
技術が進歩して企業経営の計画性が高まってくると……
間接引用 (的な表現) を囲む。
- [例文]
Hall は、キャリア概念がとらえどころのないものになってしまうのは、この概念に4つの異なる意味が含まれているからだ、と述べている。
- [例文]
統計解析ソフトの普及にともなって、計算プロセスの理解がないままに複雑な統計手法をつかった論文が量産されるようになる、などの弊害が指摘されている。
この用法では、文節の途中に打つことが多い。なお、直接引用の場合はカギ括弧「 」で囲む。
間投詞のあと; 強調や息継ぎや間を示す文学的/会話的表現など
- [例文]
ああ、それなら、わかる。
- [例文]
そうだ京都、行こう。 (JR東海のキャッチコピー)
論文の文章でこの用法をつかうことはめったにない。
読点を打つときの注意事項
- 読点を打たなくても読めるように、文の長さや構造を工夫する
- 読点を「打てる箇所」の間での優先順位をよく考える
- 並列の要素を区切るのに、読点以外の方法 (接続助詞、接続語、各種記号、箇条書き) が使えないか検討する
- 感覚に頼らずに、論理的に考える
その他の記号
教科書 (pp. 145--149) を参照のこと
- ナカグロ (・): (1) 同格の単語 (ふつう名詞) を並列する; (2) 欧語におけるスペースの代用
- 斜線 (/): → 「または」
- コロン (:) → 表の注釈などで、見出しとして使う
- ダッシ ()
- 三点リーダー (……): 省略するときに使う (2つ続けるのがふつう)
- キッコー 〔 〕 (文献参照のところで説明)
- (1重) 鍵括弧 「 」: (1) 重要用語の初出・定義; (2) 会話や引用; (3) 論文表題 (文献参照のところで説明)
- 2重鍵括弧 『』: 書籍・雑誌の表題 (文献参照のところで説明)
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