特集「性別分業とジェンダーの計量分析」田中 重人 (TANAKA Sigeto) (tsigeto(AT)nik.sal.tohoku.ac.jp)
性別分業を説明する世帯単位の合理的選択論 (rational household theory) を2バージョンにわけて整理し、 どちらが戦後日本社会にあてはまるかを明らかにする。 第1のバージョン (radical版) は、男女間賃金格差による比較優位に基づいて 世帯が合理的に労働配分を決めることが性別分業の原因だと考える。 第2のバージョン (moderate版) は、世帯の合理性は性別分業の枠内でしか発揮できないように 制約されているので、世帯の合理性は性別分業の原因ではないと考える。 Radical版の合理的選択論が、賃金格差が縮小すれば男女の労働配分は平等に近づくと主張するのに対し、 moderate版は、賃金の変動は女性の労働配分に影響するだけで 性別分業の基本パターンには影響しないと主張する。
「賃金構造基本統計調査」「労働力調査」「社会階層と社会移動 (SSM) 全国調査」「社会生活基本調査」 「NHK 国民生活時間調査」のデータにみられる変動を追跡した結果、 若い年齢層での男女間賃金格差が縮小しているのに、 フルタイム職を継続する女性や家事をする男性は増えていないことがわかった。 これはmoderate版の主張を裏付ける結果であり、性別分業は世帯の合理性によって 維持されてきたのではないことを示している。
Created: 1999-09-09. Updated: 2002-04-01. This pages contains Japanese characters encoded in accordance with MS-Kanji, "Shift JIS".