[NFR調査] [田中の研究成果]

無効回答傾向の地域差

(第12回日本家族社会学会大会 (2002-09-21) 報告要旨)

田中 重人(東北大学大学院文学研究科)
(tsigeto(AT)nik.sal.tohoku.ac.jp)

PDF版 (174KB)

全国家族調査 (NFR98) のなかの無効回答 (無回答および「その他」「わからない」) について、地域別の差異に焦点をあわせて分析をおこなう。質問項目のうち、非該当ケースの存在しない50項目だけを使う。

田中 [1] は都道府県ごとに無効回答発生率に差があることを指摘した。さらに、回収率の高い都道府県で無効回答が多くなる [1: 161] ことを示し、「回収率の高い地域は、……回答の動機づけの弱い、いわば消極的な調査協力者が多いのかもしれない」[1: 179] と述べた。しかし、無効回答の地域差をもたらす原因について、踏み込んで分析してはいない。

本報告では地域ブロックと大都市圏によって市区町村を分類し、それに基づいて分析をおこなう。地域ブロックは北海道・東北・関東・北陸・中部・近畿・中国・四国・九州の9ブロックである。関東・中部・近畿・中国・九州については、1990年「国勢調査」の報告書 [2: 791-795] で設定された「大都市圏」にふくまれていたかどうかによって「大都市圏」「非大都市圏」にさらにわける。回収率は、NFR委員会から提供された地点別非回収数のデータに基づいて、市区町村別の回収率に再構成した数値を使う。

関東・近畿の大都市圏の回収率は低い;また、関東・中国・九州の大都市圏では無効回答がすくない (表1)。これらの地域別の差異は、回収率の高低のほか、年齢や学歴のちがいによってもたらされている可能性がある。そこで、これらの変数を同時に投入したロジスティック回帰分析をおこなった。結果 (表2) から、市区町村別の回収率の高低は、無効回答の発生に影響しないことがわかる。一方、年齢は無効回答を増やす効果を、教育年数は無効回答を減らす効果をもつ。そして、これらの要因をコントロールした上でも、関東大都市圏、中国、九州大都市圏で無効回答がすくなくなっている。

NFR98 データの無効回答の発生状況には、地域による大きな差がある。これは、田中 [1: 179] がいうような回収率の差で説明できるものではない。年齢・学歴構成の差に帰せられるものでもない。目下のところ原因不明の現象である。

キーワード:欠損データ、無回答、都市

文献

付記:本報告で使用したデータは、日本家族社会学会全国家族調査委員会によって行われた全国家族調査データ(NFR98)を許可を得て使用したものである。
表は省略しました。 完全な内容は PDF版 (174KB) をご覧ください。
(C) 2002 田中重人
この論文は第12回日本家族社会学会大会 (2001年9月21日:小金井市, 東京学芸大学)で報告したものです ご意見・ご批判をいただければ幸いです。 なお、論文の全部または一部を著者の許可なく転載・配布することを禁じます。

NFR (全国家族調査) のページ
田中 重人 (tsigeto(AT)nik.sal.tohoku.ac.jp)

Created: 2002-11-13. Updated: 2002-11-14.

This page contains Japanese characters encoded in accordance with MS-Kanji: "Shift JIS".