[Tanaka S.]
[SSM調査]
職業威信スコア尺度と賃金の相関分析
田中 重人
(大阪大学人間科学研究科社会学専攻)
(tsigeto(AT)nik.sal.tohoku.ac.jp)
要旨
職業威信スコア尺度と賃金との間の相関分析をおこなった。
1995年「賃金構造基本統計調査」(労働省) の「職種」カテゴリー (116) を単位として、
6月分「きまって支給される給与額」
と75年版職業威信スコアとの順位相関係数 (Kendall's τ) を求めた。
結果は、
- 女性の場合 τ=0.413
- 男性の場合 τ=0.181
であった。
ちなみに男女の賃金の順位相関は τ=0.427 である。
男性については、職業威信と賃金との間にかなりの食い違いのあることがわかる。
一方、女性は男性にくらべて、職業威信の序列と賃金の序列との一致度がかなり高い。
もっとも、「賃金構造基本統計調査」の職種の選び方がかなり恣意的であるため、
上の分析結果がどれくらいの一般性をもっていえるかはわからない。
とはいえ、職業的な階層構造の探求のために重要な資料であることは間違いない。
資料
賃金のデータ
「賃金構造基本統計調査」データ
は、労働省政策調査部『賃金センサス 平成8年版』(日本統計協会) による。
分析に用いたのは、「毎月きまって支給される給与額」
の各職種の男女別平均値である。
これは労働契約等に基づいて1995年6月分の給与として支払われたもので、
家族手当、通勤手当、超過勤務手当などをふくんでいる。
『賃金センサス』で上記の平均値が計算されているのは、
常用労働者が10人以上の民間の事業所の労働者についてのみである。
また一時的な雇用者や短時間労働の者は除外されている。
さらに、職長・係長・課長・部長などの「職階」に属するものものぞかれている。
職種と職業威信スコア
SSM職業小分類は95年版、職業威信は75年版スコアを95年版職業小分類にあわせて割り振ったものを用いた。
ファイルは occtable.txt Ver.2 (1996.11.20) による。
「賃金構造基本統計調査」の各「職種」について、それぞれの定義にしたがい、
SSM職業分類 (95年版) の該当小分類コードを割り振っておく。
これでSSM職業小分類とのマッチングが可能となる。
分析
上記ふたつのファイル情報をマッチさせながら、
「賃金構造基本統計調査」の各職種の給与と職業威信スコアとの順位相関を求めた。
計算は自作のPerl スクリプトによる。
出力は以下のとおり。ただし、
- N: 有効な職種の数 (男女のどちらかがひとりもいないため欠損値になる職種がいくつかある)
- P: 2変数の大小関係が一致 (concord) しているペアの数
- Q: 2変数の大小関係が逆転 (discord) しているペアの数
- X: 左側の変数のみが等しいペアの数
- Y: 右側の変数のみが等しいペアの数
- γ: Goodman-Kraskal の 順位相関係数 γ = (P-Q)/(P+Q)
- τ: Kendall の 順位相関係数 τ = (P-Q) / ( sqrt(P+Q+X) * sqrt(P+Q+Y) )
Rank Correlations:
----------------------
女性給与 * 男性給与
N 113
P 4512
Q 1810
X 2
Y 4
γ .427
τ .427
----------------------
女性給与 * 威信スコア
N 114
P 4336
Q 1748
X 2
Y 355
γ .425
τ .413
----------------------
男性給与 * 威信スコア
N 115
P 3677
Q 2521
X 4
Y 353
γ .187
τ .181
----------------------
各職種からみて discord な相手方の数の表を置いておく。
男性給与*威信 の discord が多い順にソートしてある。
どういうところで食い違いが生じているかを検討してみるといい。
注意事項
「賃金構造基本統計調査」の職種は、網羅的なカテゴリーではない。
「一般事務」「会計事務」などがないことに象徴されるように、
プリコードの職種表に該当職種がないために、多くのサンプルが欠損値となっている。
また管理職者が含まれていないこともあり、
116の「職種」がカバーしているのは、調査対象母集団のわずか3割にすぎない。
さらに、官公庁や小規模事業所の労働者、短時間労働者、一時労働者が抜け落ちていることも指摘できよう。
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Last Updated at 2001-08-24.
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