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田中重人 (東北大学文学部准教授)
2017-10-31
一方が労務を提供し、それに対して他方が賃金を払うという契約を「労働契約」という。労働契約に基づいて発生する「労働者」と「使用者」の関係を「労働関係」という。労働関係に関連する法の総称が「労働法」である。
労働契約の当事者のうち、労務を提供する側を「労働者」という。もう一方の当事者 (労務の提供を受け、賃金を支払う側) と、その代理として労働者の指揮監督に当たる者をあわせて「使用者」という。
誰が「労働者」で誰が「使用者」であるか、また当該の関係が労働関係といえるかどうかの判断は微妙なことがある (大内・内藤 2010)。
近代資本主義社会の初期には、当事者同士の契約の自由が原則であり、政府が介入したり、労働組合を結成して集団的に交渉したりすることは禁止されていた。しかし、今日では、労働は特殊な領域とみなされており、「労働法」と呼ばれる独自の法体系が成立している。
「社会的ジレンマ」(social dilemma) とは …… ミクロな水準での各行為者の合理的な行為の集積が、マクロな水準では非合理的な結果をもたらす現象
個々の行為者の努力では解決できないので、政府による介入の必要がある。
「労務」というのは命令に従って働くということである。このため、労働契約はしばしば奴隷制や人身売買と変わらないものとなり、労働者の自由権を保障できない事態が起きる。
また、契約はそもそも完全に当事者の自由にまかされるものではない。特に、労働者を雇うという行為は、ある程度「公的」な性格を帯びたものと考えられているので、法的な介入が特に予定されている。
近代的な基本的人権の概念は、自由権と平等権からスタートした。 20世紀に入って基本的人権の概念が拡張され、「社会権」と呼ばれる一群の権利がふくまれるようになる。
社会権を保障するための発達した社会保障制度を持つ国家が20世紀後半になって出現した。これが「福祉国家」(welfare state) である。福祉国家を維持するには、政府による公的扶助と社会保険のほか、家族と労働市場を通じた社会保障の仕組みが不可欠である。
1対1で交渉をおこなう場合、契約が不成立のときの状況がよいほうの側が、より強い交渉力を持つ傾向がある (中山, 2005)。労働者と使用者の関係においては、下記のような理由で、使用者のほうが強い交渉力を持っていることが多い。
労働者にじゅうぶんな交渉力を確保するにはどうすればいいか?
「期間の定めのない雇用」の場合、労働者は、いつでもやめることができる。使用者の許可を得る必要はない (2週間前に予告が必要)。
これに対して、使用者の側から労働契約を打ち切る「解雇」は厳しく制限されている。
「合理的な理由」とは:
いずれの場合も、単にこれらに該当する事由があるというだけでなく、これらの事由に対して解雇という対応をとることが「社会通念上相当」であると認められなければならない。特に、人員整理の場合には、配置転換や希望退職募集などの解雇回避努力をまずおこなうこと、解雇する人員を合理的な基準によって公正に選定すること、事前にじゅうぶんな説明をして誠実に協議をおこなうことが要求される。
仕事に起因する労働災害による休業期間や、産前産後休業期間中の解雇は、明文で禁止されている (労働基準法 19条)
「団結権」「団体交渉権」「争議権」を「労働三権」という。
労働組合 (labor union / trade union) に関する具体的な法律として、労働組合法がある。
労働組合と使用者との書面による協定のことを「労働協約」という。労働協約は就業規則や個別の労働契約に優越する。
労働協約の中に、「従業員は労働組合に加入しなければならない」旨の規定を盛り込むことがある。このような規定のことを「ユニオン・ショップ」という。
労働協約は、基本的には、組合員だけに適用される。ただし、3/4以上の労働者を対象とする労働協約は、組合に加入していない労働者も対象となる。
日本社会における現状 (河西・マオア, 2006; 村杉, 2010):
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