[Previous page]
[Next page]
http://tsigeto.info/2020/occ/o200720.html
田中重人 (東北大学文学部准教授)
2020-07-20
現代日本学概論I「現代日本における職業」
第10講 社会的不平等と職業
[配布資料PDF版]
- [テーマ]
近代化の進展と「平等」に関する社会科学的研究
前回の課題について
- [課題]
「福祉国家」(welfare state) とはどのようなものか。また、福祉国家ではない国家としてはどのような例が考えられるか。
- 解答の戦略:
歴史的な観点から説明するか、機能的な条件を説明するか。
歴史的な説明を志向する場合、現実に存在する「福祉国家」と呼ばれる国家 (たとえばイギリス) が形成されてきた過程をたどって、何を実現してきたか (人権としての「社会権」の確立、公的扶助制度、社会保険制度、経済政策、労働市場規制、平等政策など)、何と差別化しようとしてきたか (自由放任主義、社会主義、ファシズムなど)を説明する。
機能的な条件を説明する場合には、辞書等の定義 (たとえば「国民に生存権を保障し、平等に福祉を分配する国家」(ブリタニカ国際大百科事典)) をもとにして、どのような条件を満たせば「福祉国家」といえるのかを考えるとよい。
出典を必ず書くこと。
近代化 (modernization) とは
- 政治面の変化:
国民国家; 民主化;
- 経済面の変化:
分業と市場経済の発達; 産業化; 雇用労働者化
- 生活様式の変化:
合理化; 都市化; 学校教育; 家族の機能縮小
近代化前半の資本主義社会では、自由競争が重視され、労働者の窮乏化が進む →マルクス主義的な階級観の土台
20世紀における重要な変化 (第4講資料参照)
- 第1次世界大戦 (1914--1918) とロシア革命 (1917)
- 世界大恐慌 (1929) とアメリカのニューディール政策 (1933--1939)
- ファシズムと第2次世界大戦 (1939--1945)
経済における国家の役割が増大し、「混合経済」と呼ばれる経済体制が確立する (Samuelson, 1974)。
20世紀後半には「福祉国家」化が進み、多くの国で医療保険・年金制度が整備される →基本的人権としての「社会権」の確立
階級論の衰退と「新しい不平等」
近代化の後半局面では、階級による不平等は「目立たなく」なってくる
現在の階級論の中心は、階級構造それ自体ではなく、「機会の不平等」の探求に移っている →何を「個人の責任」とみなすかの政治的闘争
他方で、民族や性別といった「生得的」要因による不平等への関心が増大している →階級構造というよりは家族、教育、国家の問題
今後の予定
授業は今日で終了です。
- 7/24:
レポート草稿提出 (Google Classroom) →コメントを返します
- 7/27, 8/3:
質問時間: 講義はありませんが、質問がある人は授業時間にMeet会議室に来てください
- 8/11:
レポート最終版提出 (Google Classroom)
文献
- Esping-Andersen,G. (2001)『福祉資本主義の三つの世界』(岡沢憲芙・宮本太郎訳) ミネルヴァ書房. {ISBN:4623033236}
- 今田 高俊 (1989)『社会階層と政治』東京大学出版会. {ISBN:4130320971}
- 武川 正吾 (2004)「福祉国家と個人化」『社会学評論』54(4), p. 322-340.
<http://doi.org/10.4057/jsr.54.322>
- 武田 万理子 (1997)「女性と法:雇用を中心に」渡辺和子 (編)『アメリカ研究とジェンダー』世界思想社, pp. 152--166.
- Samuelson, P. A. (1974)『経済学』(都留重人訳; 原書第9版) 岩波書店.
この授業のインデックス
前回の授業
|
次回の授業
TANAKA Sigeto
History of this page:
- 2020-07-19:Created
- 2020-07-20:Minor corrections
This page is monolingual in Japanese (encoded in accordance with MS-Kanji: "Shift JIS").
Generated 2020-07-20 03:45 +0900 with
Plain2.
Copyright (c) 2020
TANAKA Sigeto