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田中重人 (東北大学文学部准教授) 2021-05-10

現代日本学概論I「現代日本における職業」

第2講 労働統計(2):賃金と労働時間


[配布資料PDF版]
[テーマ] 賃金と労働時間の統計

労働力調査について追加説明


前回宿題について

[課題] 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」について、2019年に発覚したのはどのような問題か。また、それはなぜ問題だと考えられるか。

総務省 (2019) から「結果報告書」を読むとくわしいことがわかるが、長くて難解なので、新聞報道などをみて概要を把握してから内容を検討するとよい。調査の精度などへの影響については厚生労働省 (2019) を参照。ただし、これらは政府自身による評価結果であることに注意。

[解答例] (1) 一部の産業 (バー、キャバレー、ナイトクラブ等) を調査対象から除外していた、(2) 調査員による訪問調査をしなければならないのに郵送調査をおこなっていた、(3) 調査計画と実際の調査の提出期限がちがっていた、(4) 政府統計の「一斉点検」がおこなわれたときにこれらの問題を報告していなかった、などの問題があった。これらがなぜ問題かというと、(A) 調査計画や調査報告書に嘘の記述をしていたことになる (B) 調査の精度が下がったり結果が偏ったりする、という弊害があるからである。

気を付けてほしいこと:

やりかたがよくわからない場合は、たとえばつぎのような方法を試してみてください:


「賃金構造統計基本調査」について

歴史

戦前から前身になる調査 (鈴木, 1995) がありましたが、戦後1948年には「個人別賃金調査」として開始。何回かの名称変更を経て、1965年に「賃金構造基本統計調査」となりました。

調査をおこなってきたのは労働省ですが、2001年の省庁再編で厚生省と合併したため、それ以降は厚生労働省がおこなっています。

情報源

厚生労働省サイト <https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html> に情報があります。

報告書は毎年『賃金センサス』(賃金構造基本統計調査報告) というタイトルで出版されます。最新の報告書は、昨年発行された「2020年版」で、これには2019年の調査についての結果が載っています。

調査対象と調査方法

「賃金構造基本統計調査」では、事業所を抽出し、そこで働いている人をさらに抽出して、それらの労働者について報告することを事業所に求めます。

「労働力調査」では世帯を抽出して、そこに所属する個人の就業状態を調べていましたが、「賃金構造基本統計調査」はそれとは異なり、労働者を雇っている企業 (の事業所) から回答を求めます。賃金は、労働者にきいても正確な回答をえることがむずかしい (覚えていない/回答したくない) ので、通常、事業所対象の調査で把握します。

毎年 6月分 の給与その他の労働条件と労働者の属性 (性別・年齢・勤続年数・職業など) についての調査がおこなわれます。

以下は、現在の調査についての解説です (厚生労働省の解説は非常にわかりにくいので、資料を読むときは注意すること)

「常用労働者」というのは、雇用期間の定めのない契約または1ヶ月以上の期間の契約で雇われている労働者をいいます。 2017年以前の調査では、この「常用労働者」の定義がちがっていました <https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/chinginkouzou_02.pdf> 。


宿題

つぎの各項目間の関係について整理して述べよ:

参考資料:水町勇一郎 (2010)『労働法』(第3版) 有斐閣 ISBN:9784641143944. 88, 89, 92--97ページ。【資料を Google Classroom に掲載済み】


文献


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