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田中重人 (東北大学文学部教授) 2022-11-24

現代日本学各論III/現代日本学社会分析特論I「現代日本における家族と人口」

第5講 人口統計と人口現象


[配布資料PDF版]
[テーマ] 人口学と人口統計

「政府統計の総合窓口」(e-Stat) の使用

e-Stat について

日本の政府統計情報を一括して提供するサービス。 2008年開始。現在では、多くの政府統計がこの e-Stat サービスで利用できる。

ただし、データは必ずしも使いやすくない。データの作成は各省庁にまかされているので、形式がまちまちである。おなじ統計なのに年次によって形式がちがうこともある。また、調査についての説明や注意事項がほとんどないので、それらについては、担当している省庁のサイトや調査報告書をみる必要がある。

ふたつのデータ形式

e-Stat が提供する統計データはおおきく2種類にわかれる:

ファイル: Excelなどのファイルをダウンロードできる
データベース: 画面上で情報の組み合わせを指定して表やグラフを表示させたり、CSVなどの形式でファイルを作成してダウンロードできる。結果を自動的に取得するためのインターフェース (API) も提供されている場合がある

将来的には後者の形式に統一されていく方向であるが、現在は両者が混在している。両方が提供されている統計もあるし、片方だけの統計もある。

いずれの形式も、各省庁が作成してきた報告書に掲載する表の内容を基にしてできていることが多い。報告書をみて、どのような表が並んでいるかを理解しておくとよい。

データベースの使いかた


「国勢調査」について

日本国内に居住する全員について、人数と各種属性、世帯の状況などを調べる調査。 1910年にはじめておこなわれた。それ以降、基本的に5年に1度おこなわれている。この調査が、日本の人口を数える基本的な資料になっている。 https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2020/ 参照。


人口学とは

「人口」(population): ある属性 (たとえば居住地・年齢・性別など) に該当する人間の数

人口について研究する学問を「人口学」と呼ぶ。狭い意味では、人口やその変動をとらえるための理論をあつかう「形式人口学」(formal demography) だけを「人口学」と呼び、人口に関わる具体的な諸問題をあつかう「人口研究」(population studies) と区別することがある。


人口ピラミッド (population pyramid)

ある時点での人口を、左が男性、右が女性、下が若年、上が高年齢になるようにして、グラフにあらわしたもの。年齢構造の特徴をひと目で把握できる。

現代日本では、どの年齢層が多く、どの年齢層が少ないか? それはどのように変化してきたか?


人口動態 (population dynamics)

人口方程式 (demographic equation)


人口増加 =     自然増加    +     社会増加
     = ( 出生 − 死亡 )  +  ( 流入 − 流出 )

現代日本社会では、国際移動による増減はそれほど大きくない。日本全体の人口の変動は、大部分は自然増加で決まると考えてよい。すなわち、出生数と死亡数の差である。

コーホート観察と期間観察

出生コーホート (birth cohort)……おなじ年に生まれた人々を指す。単に「コーホート」と呼ばれることも多い

「コーホート」とは、おなじ時期におなじ出来事を経験した人々の集団をいう。

人口転換 (demographic transition)

近代化にともなって、死亡率が低下し、出生率が下がる。この結果として、近代社会は、

多産多死 → 多産少死 → 少産少死

という変化を経験する。この変動のことを「人口転換」と呼ぶ。


課題

総務省統計局ウエブサイト「統計ダッシュボード」掲載の「人口ピラミッド」 <https://dashboard.e-stat.go.jp/pyramidGraph?screenCode=00570®ionCode=00000&pyramidAreaType=2> から、1920年、1970年、2020年のグラフを見て、各年の特徴を説明せよ。全体的な形状のほか、こまかい部分の特徴についても観察すること。


文献


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