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田中重人 (東北大学文学部教授)
2023-01-20
X1 が X2 と Y の両方に影響をもたらしているが、X2 は Y に対しては影響力を持たない場合を考える
X1 → X2 X1 → Y X2 Y
このとき、X1 を無視して X2 と Y だけの関連を分析すると、 X2 が Y に対して影響を与えているように見えるので、因果関係を見誤ることがある。このような現象を「疑似相関」という。(教科書168--169ページも参照。)
X1 によって X2 が決まり、それによって Y が影響を受けるという因果関係を考える。
X1 → X2 → Y
このとき、X1 は Y に 直接 影響を与えているのではなく、X2 が「媒介効果」をもたらしていることになる。
以上のようなことを考えながら、独立変数間の関連と、従属変数に対する直接的な効果を同時に把握する。
一般線形モデルのデータに対するあてはまりのよさをあらわすのが「決定係数」 R2 である。決定係数は、分散分析でいう「相関比」ηの2乗に相当するので、平方根をとれば、ηと同様の感覚で、「そのモデルによって、従属変数がどの程度説明できているか」を評価できる。回帰分析ではこれを「重相関係数」と呼び、 R であらわす。
SPSSが出力する「分散分析」表では、「母集団においては決定係数がゼロである」(= どの独立変数も、従属変数に対して効果を持たない) という帰無仮説について検定を行った結果が表示される (「有意水準」の欄)。この結果が有意でなければ、モデル全体について、説明力があるとはいえないことになる。
決定係数が有意であれば、モデル内の各独立変数の効果について解釈していく。
各変数にかかる係数については、「係数」の表に、95%信頼区間が表示される。このなかにゼロが含まれているかどうかで、5%水準で有意な効果があるかどうかを判断できる (「有意水準」の列をみて判断してもよい)。
独立変数・従属変数の両方を標準化した場合の係数を「標準化係数」(standardized coefficient) と呼び、βで表す独立変数の効果の相対的な大きさをみたい場合に使える (積率相関係数 r とおなじ感覚で評価できる)。
各独立変数の効果の大きさは、「被験者間効果の検定」の表の「平方和」の列に表示される。「修正総和」の行の数値が、従属変数の平方和 (分散× (ケース数−1)) である。各変数の行の平方和をこれで割ると、従属変数に対する相対的な影響力の大きさがわかる。
回帰分析をふくめ、多変量解析では、投入したすべての変数についてひとつも欠損値のないケースだけを分析に使う。このような欠損値処理方法を、「表単位」(listwise) の欠損値除去という。
この処理の結果として、 多くの変数を投入すると、それだけケース数が小さくなる ので注意。
「オプション」の「推定周辺平均」「平均値の表示」に、カテゴリ別平均値を表示したい独立変数をえらぶ。
「主効果の比較」をチェックする(「Bonferroni」で信頼区間を調整)と、どのカテゴリ間に有意な違いがあるかを比較できる。 (教科書 p. 205--207 「多重比較」の項参照)
たとえば、性別 (男性=1, 女性=2 の2値変数) を独立変数とする場合、そのまま「共変量」として使ってもよい。この場合には、「性別」の回帰係数は、値がひとつ増えることの効果をあらわすので、そのまま男性と女性の差を表すことになる。特に、独立変数がひとつだけのばあいには、男女の平均値の差が回帰係数と等しくなる。
ただし、2値変数を独立変数とするときには、一方を0、他方を1にしたほうが結果の解釈が簡単になるので、そういう変数をつくって使うことが多い。
recode Q1_1 ( 2=0 ) ( else=copy ) into MALE.
このような、特定の条件を満たす場合に1、それ以外の場合にゼロをとるような変数のことを「ダミー変数」(dummy variable) という。
ある変数が k 個の値を持つとする。この変数を回帰分析で使いたい場合は、 k-1 個のダミー変数を作成する。
たとえば、学歴を3区分した変数 EDU がある場合、つぎのようにして、ふたつのダミー変数を作る。
recode EDU ( missing=sysmis ) ( 1 = 1 ) ( else = 0 ) into EDU_1. recode EDU ( missing=sysmis ) ( 3 = 1 ) ( else = 0 ) into EDU_3.
この例では、EDU=2 の場合にはダミー変数をつくっていないことに注意。
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