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http://tsigeto.info/2023/family/f231019.html
田中重人 (東北大学文学部教授) 2023-10-19

現代日本学各論III/現代日本学社会分析特論I「現代日本における家族と人口」

第2講 法律を読んでみる


[配布資料PDF版]
[テーマ] 法律の条文の読みかた

宿題について

注意事項

「民法等の一部を改正する法律」(2022年12月16日法律102号)

調べかたの例:

法律公布年月日がわかっているので、2022年12月16日の『官報』を直接探してもよい

「第一法規法情報総合データベース D1-Law.com」 <https://www.daiichihoki.co.jp/d1-law/> で検索することもできる。

2016年の改正について

法務省による説明: http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00181.html

改正までの経緯

憲法 14条: すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

2015年12月16日 最高裁判所大法廷判決 (平成25年(オ) 第1079号 損害賠償請求事件) <http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85547>

本件規定のうち100日超過部分は,遅くとも上告人が前婚を解消した日から100日を経過した時点までには,婚姻及び家族に関する事項について国会に認められる合理的な立法裁量の範囲を超えるものとして,その立法目的との関連において合理性を欠くものになっていたと解される。

〔……〕本件規定のうち100日超過部分が憲法24条2項にいう両性の本質的平等に立脚したものでなくなっていたことも明らかであり,上記当時において,同部分は,憲法14条1項に違反するとともに,憲法24条2項にも違反するに至っていたというべきである。

「民法の一部を改正する法律案」(第190回国会) → http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00181.html

その後の動き


親族 (kinship)

親子関係と夫婦関係でたどれる間柄の人々のこと

  1. 親子関係だけでたどれる範囲の人々を「血族」(consanguinity)、夫婦関係をたどらないとたどりつけない人々を「姻族」(affinity) という。
  2. 親族のうち、世代的に上の者を「尊属」(ascendant)、下の者を「卑属」(descendant)という。
  3. 世代を上または下に一方的に進んでたどり着ける場合を「直系」(lineal)、折り返さないとたどりつけない場合を「傍系」(collateral) という。
  4. 親族関係の近さをあらわすのに「親等」(degree) を用いる。これは、親子関係を何回経由するとその人にたどり着けるか、その回数を数えるものである (ローマ法方式)。
日本の法律では、「姻族」は「配偶者の血族」と「血族の配偶者」のことをいう
日本の法律では、「親族」は「6親等以内の血族」と「3親等以内の姻族」および「配偶者」である

民法と戸籍法

日本における家族法の歴史

親族関係を規定する法体系のことを「家族法」(family law) という。古い用語では「身分法」「人事法」ともいう。また、相続に関する部分を「相続法」と呼び、それ以外の部分を「親族法」と呼んで区別することがある。

日本の家族法に関する年表 (有地, 2005, pp. 4--11)

1868: 明治維新
1872: 戸籍法 施行 (=「壬申戸籍」)
1890: 民法 制定 → 民法典論争 → 施行されないまま廃止
1898: 再度の民法制定 (=「明治民法」)
1945: 連合国軍による占領 (〜1951)
1947: 民法・戸籍法 改正 (=現行民法・戸籍法)

明治民法と戸主制度

現行法における戸籍

戦後改革と民法・戸籍法改正

現行の日本法では、集団としての「家族」に相当する規定はなく、夫婦 (婚姻) 関係と親子 (実子/養子) 関係が「民法」(第4編) に定められている。

ただし、住民基本台帳が「世帯」別に編成されており、これが集団としての「家族」を代用するものとして扱われることがある。


親子関係の推定

親子関係には2種類ある

実親子関係は、子供の出生によって生じる。 → 出生届、出生証明書

母親との関係は、出産によって確定するが、父親との関係は:

婚姻中に妊娠した子供は夫の子供 (嫡出子) と推定される = 嫡出性 (legitimacy) の推定

具体的には、婚姻の成立から200日後、解消 (離婚・死別) から300日以内 (民法 772条)
夫は1年以内に否認の訴えを起こすことができる (民法 774--778条)
例外的に、親子関係が客観的にありえないと証明できる場合には嫡出推定の適用外とする、という判例が確立している (推定の及ばない子)。この「証明」にDNA鑑定をふくめるかどうかについては議論がある。 →親子関係不存在確認

参考文献


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