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田中重人 (東北大学文学部准教授)
2018-07-27
文献引用のルールを守ることには、倫理的な観点からみてどのような意味があるか考えよ。
文章を書く=情報の流布 → 他人の利害との衝突
学問の世界では、「誰が最初に考えたか (または発見/発明したか)」ということに非常に高い価値が置かれている。 第1考案者 (または発見/発明者) は、そのアイデアや発見について「優先権」(priority) を持つ。
優先権は、著作権とはちがって、時間がたっても消滅せず、譲渡・相続不可能である。 また、引用するに当たって当事者への連絡・許可は不要である。
大学のレポートにおけるplagiarismは、筆記試験における cunning と同様の不正行為とみなされる。
経済的利益を保護するために、さまざまな「知的所有権」が設定されている:特許権/意匠権/商標権/実用新案権 など。これらはいずれも、 経済的利害 がなければ問題にならない。
これに対して、著作権 (copyright) の侵害は、経済的利害がなくても問題になりうる。 (→「版権」は旧称)
著作権者は著作物について種々の権利を持つ
著作物とは、「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条) をいう。たとえば文章/音楽/舞踊/美術/建築/図面/映画/写真/プログラムなど (著作権法10条) がこれにあたる。アイディアやデータそのものではなく、それらの表現されたかたちが保護の対象になる。
公表された著作物から通常の文章だけを引用する場合の 許容範囲 (教科書p. 165 に田中加筆)
文章以外の引用の場合は、つぎのようにする
名誉やプライバシーの侵害が許容される例外的な条件は、次のふたつ (刑法230条の2第1項ほか)。
ただし、つぎの場合は許容基準があまくなる。
公表前に十分な準備を
許可のないまま公表せざるを得ないこともあるが、相応の覚悟が必要である。
マイノリティに対する蔑視表現、あるいは属性に基づく固定的イメージ (stereotype) を助長する表現に注意すること。
こうした表現が問題になるかどうかは文脈による。自分の文章がどのような派生的効果を持つか、読者によってどのように受け取られる可能性があるか、よく考えること。
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