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下井 隆史 (2003) 労働法 第3版. 有斐閣


2 解雇権濫用禁止の法的ルール

 解雇は合理的理由がなければ権利濫用で無効という法的ルール (「解雇権濫用法理」ともよばれる)は,1965年頃までに判例のなか にほぼ定着し,最高裁が日本食塩製造事件判決(最2小判昭50.4. 25)において,「使用者の解雇権の行使も,それが客観的に合理 的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場 合には,権利の濫用として無効になる」と述べたことにより確認 された。さらに高知放送事件判決(最2小判昭52.1.31)は,就業 規則に定められた解雇事由にあたる場合でも「当該具体的な事情 の下において解雇に処することが著しく不合理であり,社会通念 上相当なものとして是認することができないときには」,解雇権 の濫用として無効になるとしている。これにより,解雇権濫用ル ールの具体的内容がさらに明らかとなったといえよう。

 労基法18条の2は,日本食塩製造事件・最高裁判決が述べたと ころを文言も変えずに条文としたものである。さらに2003年の労 基法改正では,労働者が解雇予告から退職の日までに解雇理由に ついての証明書を請求した場合には使用者は遅滞なく交付すべき こととした同法22条2項が新設され,就業規則に必ず記載しなけ ればならない「退職に関する事項」(同法89条1項3号)には解雇 の事由も含まれるとする改正がなされた。

……

合理的理由のない解雇は無効であるという法的ルールが判例に よって確立されてきたことは,わが国の労働関係法の重要な特徴 の1つといえよう。それは,わが国では労働力が供給過剰で企業 間の移動があまりなく,また終身雇用と年功賃金の慣行が広く行 われているという認識にもとづいて形成されたものと思われる。 つまり,労働者が特定企業の従業員たる地位を失えば生活は維持 できず回復不可能な損失がもたらされるから,使用者による解雇 権の行使は厳しく戒めなければならないと考えられたのであろう。

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p. 68-70
下井 隆史. 労働法 第3版. 有斐閣. {2003:464114334X}


Tanaka Sigeto / RemCat / ReMCatQuot

Created: 2007-01-02. Updated: 2007-01-02.

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