労働社会調査文献研究会 (日本労働研究機構) 2000-11-17.田中 重人 (TANAKA Sigeto) (tsigeto(AT)nik.sal.tohoku.ac.jp)
昨年大阪大学に提出した 博士論文 の内容を中心に、 その後の研究成果を若干まじえて報告する。 報告の中心的な関心は、現代日本社会における性別分業の動態を把握することである。
性別分業測定の王道は、生活時間の男女差を調べることだろう。 家事労働と市場労働というふたつの労働に費やす時間の男女差がどれくらいあるのか、 どう変化してきたかを調べることが第1の課題となる。
もちろん人々は日常的にいちいち時間の使いかたを決めているわけではなく、 人生の特定のポイントでどのような選択をしたかによって、その後のライフスタイルの大枠が決まる。 性別分業という観点からいって重要なのは、結婚から育児期にかけての間に、 夫婦それぞれがどのようなキャリア選択をおこなうかである。 そこでつぎに、結婚・育児期の女性のフルタイム継続就業率を分析する。
第3に、このような男女のキャリア選択を規定する要因として、 日本の労働市場に埋めこまれた性別賃金構造が重要だろう。 賃金構造が変化すれば、男女のキャリア・コースを差異化するインセンティブは変化する。 賃金構造の変化によって、結婚・育児期のキャリア選択 ――ひいては性別分業のありかた―― が説明できるかどうかをあきらかにする。
最後にこれらの分析にもとづいて、 性別分業のない社会をめざす現実的な政策としてどういう方向がありえるかを論じる。
Created at 2000-11-09. Last updated at 2001-08-28. Sorry to be Japanese only (encoded in accordance with MS-Kanji: "Shift JIS").