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田中重人 (東北大学文学部准教授)

現代日本論概論「現代日本における職業」東北大学 文学部 (2012年度 第4セメスタ)

第10講 不平等と労働のかかわり


[配布資料PDF版]
[テーマ] 差別禁止の考えかたと限界

今後の予定について

1/18: 毎回の「授業時間内課題」をまとめて提出 (下記)、期末試験 (A4用紙1枚の自筆メモのみ持込可)
1/25: 試験・課題返却、全体のまとめ

前回の宿題について

みるべき報告書と統計表は次のとおり。

東北大学附属図書館における統計資料の所在

データについては、「政府統計の総合窓口」 (http://www.e-stat.go.jp) 、労働政策研究・研修機構の「労働統計データ検索システム」 <http://stat.jil.go.jp> 、あるいは各種の年鑑・白書などを利用することもできる

調査の概要や方法について知るには、印刷体の報告書の解説 (報告書の巻頭または巻末にある) を読むのがいい。総務省統計局 (http://www.stat.go.jp) 、厚生労働省 (http://www.mhlw.go.jp) のサイトにも情報はあるが、断片的であり、まとめて理解しにくい。

労働力調査 (2008年) について

「労働力調査」は、総務省統計局 (過去には総務庁あるいは総理府) による調査。国勢調査調査区 → 住戸の層化2段抽出で対象標本を抽出している。抽出された住戸に住む世帯の構成員全員について1枚の調査票に記入する。ただし集計は15歳以上の者についてだけ。調査は毎月おこなわれ、おなじ世帯が2年間にわたって2か月間 (つまり4回) 対象となる。

毎月の調査について報告書 (月報) が刊行される。 1年分 (1月から12月) についての平均をまとめた報告書 (年報) は年1回刊行。いずれも、標本による集計結果そのものではなく、母集団についての人数を推計した結果が表示されている。

かつては「労働力調査特別調査」が別の調査として存在した。 2002年からこれは労働力調査の本体に統合されて、「基礎調査」「特定調査」の2本立てとなった。現在では、労働力調査の標本の一部を使って、かつての特別調査と同様の内容が「特定調査」としておこなわれている。

賃金構造基本統計調査 (2008年) について

「賃金構造基本統計調査」は労働省→厚生労働省による。毎年実施され、6月分の給与その他の労働条件と労働者の属性 (性別・年齢・勤続年数・職業など) についての調査がおこなわれる。調査対象や調査方法が頻繁に変更されるため、過去のデータとの比較には注意が必要。以下は、現在の調査についての解説 (2008年調査もおなじ)。『賃金センサス』の解説は非常にわかりにくいので、注意して読むこと。

「常用労働者」5人以上を雇用する事業所が対象。ただし、農林漁業や官公庁は含んでいない (1975年以前はサービス業も含んでいなかった)。各事業所で、指示にしたがって労働者を抽出し、その人について調査票に記入する。集計は、通常、「常用労働者」のうちの「一般労働者」(短時間労働者以外の労働者) についておこなわれ、「短時間労働者」(所定労働時間または所定労働日が一般の労働者よりすくない労働者 =パートタイム労働者) の集計は別に表示されている。

賃金や労働時間の平均値が『賃金センサス』として毎年刊行される(年次表記に注意)。賃金は右に長くすそを引いた分布 (対数正規分布) にしたがうので、平均値が中央値よりかなり高くなる。

まとめ


前回の課題について

個人の選択と雇用機会の制約 / 年齢の効果と時代の効果 / 外国では?


平等権と「間接適用」説

労働者を雇うという行為は、ある程度「公的」な性格を帯びたものと考えられている。→ 1960--70年代の労働判例 (浅倉・今野 1997)

憲法 第14条: すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
憲法 27条: すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。/ 2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
労働基準法 3条: 使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。
労働基準法 4条: 使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。
民法 90条: 公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする

均等法の歴史

男女雇用機会均等法 (1985年) → 1997, 2006年改正

男女雇用機会均等法 5条: 事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない
男女雇用機会均等法 6条: 事業主は、次に掲げる事項について、労働者の性別を理由として、差別的取扱いをしてはならない。 / 一 労働者の配置(業務の配分及び権限の付与を含む。)、昇進、降格及び教育訓練 / 二 住宅資金の貸付けその他これに準ずる福利厚生の措置であつて厚生労働省令で定めるもの / 三 労働者の職種及び雇用形態の変更 / 四 退職の勧奨、定年及び解雇並びに労働契約の更新
男女雇用機会均等法 7条: 事業主は、募集及び採用並びに前条各号に掲げる事項に関する措置であつて労働者の性別以外の事由を要件とするもののうち、措置の要件を満たす男性及び女性の比率その他の事情を勘案して実質的に性別を理由とする差別となるおそれがある措置として厚生労働省令で定めるものについては、当該措置の対象となる業務の性質に照らして当該措置の実施が当該業務の遂行上特に必要である場合、事業の運営の状況に照らして当該措置の実施が雇用管理上特に必要である場合その他の合理的な理由がある場合でなければ、これを講じてはならない。
男女雇用機会均等法 8条: 前三条の規定は、事業主が、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となつている事情を改善することを目的として女性労働者に関して行う措置を講ずることを妨げるものではない。

性別役割と不平等

夫婦間での分業とその帰結

このような原因による不平等は「差別」といえるか?

法的・政策的対応としてどのようなことが考えられてきたか

両立政策あるいはワークライフ・バランス (work-life balance) 政策

さまざまな要因による不平等

現代社会に存在する不平等のほとんどに、労働は深く関わっている:民族、出身階級、学歴、地域など


文献


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