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田中重人 (東北大学文学部准教授) 2016-12-20

現代日本論概論「現代日本における職業」

第10講 社会的不平等と職業


[配布資料PDF版]
[テーマ] 差別禁止の考え方とその限界

前回の課題について

読み取るべき内容:

解釈の際に注意すべきこと:


男女差別の禁止規定とその歴史

1980年代までは、性別によって労働者のあつかいを変えることを禁止する法が確立していなかった。労働基準法に賃金差別禁止の規定はあったものの、事実上機能していなかった。採用の際に男性のみ、女性のみを募集したり、性別によって賃金、昇進機会、定年などに差をつけることは、日本の企業では広く行われており、違法だとはあまり考えられてこなかった。

1960年代以降、このような状態に対する訴訟が多く起こされ、労働のさまざまな面で、性別によって差別することは違法だという判例が確立してきた (浅倉・今野, 1997)。 → 憲法14条の「間接適用」と民法90条

これらの判例で積み重ねられてきた男女差別禁止の原則を法制化したものが男女雇用機会均等法である。 1985年に成立した後、 1997年、2006年に大きい改正が行われて、現在に至っている (山田, 2011)。

男女雇用機会均等法 5条: 事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない
男女雇用機会均等法 6条: 事業主は、次に掲げる事項について、労働者の性別を理由として、差別的取扱いをしてはならない。 / 一 労働者の配置(業務の配分及び権限の付与を含む。)、昇進、降格及び教育訓練 / 二 住宅資金の貸付けその他これに準ずる福利厚生の措置であつて厚生労働省令で定めるもの / 三 労働者の職種及び雇用形態の変更 / 四 退職の勧奨、定年及び解雇並びに労働契約の更新
男女雇用機会均等法 7条: 事業主は、募集及び採用並びに前条各号に掲げる事項に関する措置であつて労働者の性別以外の事由を要件とするもののうち、措置の要件を満たす男性及び女性の比率その他の事情を勘案して実質的に性別を理由とする差別となるおそれがある措置として厚生労働省令で定めるものについては、当該措置の対象となる業務の性質に照らして当該措置の実施が当該業務の遂行上特に必要である場合、事業の運営の状況に照らして当該措置の実施が雇用管理上特に必要である場合その他の合理的な理由がある場合でなければ、これを講じてはならない。
男女雇用機会均等法 8条: 前三条の規定は、事業主が、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となつている事情を改善することを目的として女性労働者に関して行う措置を講ずることを妨げるものではない。

性別役割と不平等

夫婦間での分業とその帰結 (田中, 2007):

このような原因による不平等は「差別」といえるか?

法的・政策的対応としてどのようなことが考えられてきたか

「間接差別」の禁止 (均等法7条)
両立政策あるいはワークライフ・バランス (work-life balance) 政策 (育児休業制度、保育所などの整備)
企業がおこなう「ポジティブ・アクション」

いずれも、現在のところ、成果を上げているとはいいがたい (川口, 2008)。


さまざまな要因による不平等

現代社会に存在する不平等のほとんどに、労働は深く関わっている:民族、出身階級、学歴、地域など


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