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田中重人 (東北大学文学部准教授)
2018-06-25
文章を書く=情報の流布 → 他人の利害との衝突
学問の世界では、「誰が最初に考えたか (または発見/発明したか)」ということに非常に高い価値が置かれている。 第1考案者 (または発見/発明者) は、そのアイデアや発見について「優先権」(priority) を持つ。
優先権は、著作権とはちがって、時間がたっても消滅せず、譲渡・相続不可能である。 また、引用するに当たって当事者への連絡・許可は不要である。
大学のレポートにおけるplagiarismは、筆記試験における cunning と同様の不正行為とみなされる。
経済的利益を保護するために、さまざまな「知的所有権」が設定されている:特許権/意匠権/商標権/実用新案権 など。これらはいずれも、 経済的利害 がなければ問題にならない。
これに対して、著作権 (copyright) の侵害は、経済的利害がなくても問題になりうる。 (→「版権」は旧称)
著作権者は著作物について種々の権利を持つ
著作物とは、「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条) をいう。たとえば文章/音楽/舞踊/美術/建築/図面/映画/写真/プログラムなど (著作権法10条) がこれにあたる。アイディアやデータそのものではなく、それらの表現されたかたちが保護の対象になる。
公表された著作物から通常の文章だけを引用する場合の 許容範囲 (木下 (1981, p. 165) に田中加筆)
文章以外の引用の場合は、つぎのようにする
名誉やプライバシーの侵害が許容される例外的な条件は、次のふたつ (刑法230条の2第1項ほか)。
ただし、つぎの場合は許容基準があまくなる。
公表前に十分な準備を
許可のないまま公表せざるを得ないこともあるが、相応の覚悟が必要である。
マイノリティに対する蔑視表現、あるいは属性に基づく固定的イメージ (stereotype) を助長する表現に注意すること。
こうした表現が問題になるかどうかは文脈による。自分の文章がどのような派生的効果を持つか、読者によってどのように受け取られる可能性があるか、よく考えること。
データの捏造 (fabrication), 改ざん (falsification), 他の研究者のアイディア等の盗用 (plagiarism) など、科学的研究遂行上の非倫理的行為を「ミスコンダクト」(misconduct) という (東北大学, 2007)。頭文字をとってしばしば「FFP」と呼ばれる。
文部科学省 (2014) のガイドラインでは、これらを「特定不正行為」と呼び、他の種類の不正行為 (補助金の流用など) から区別している。
本節で対象とする不正行為は、故意又は研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠ったことによる、投稿論文など発表された研究成果の中に示されたデータや調査結果等の捏造、改ざん及び盗用である〔……〕。 (1) 捏造 存在しないデータ、研究結果等を作成すること。 (2) 改ざん 研究資料・機器・過程を変更する操作を行い、データ、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること。 (3) 盗用 他の研究者のアイディア、分析・解析方法、データ、研究結果、論文又は用語を当該研究者の了解又は適切な表示なく流用すること。 (文部科学省, 2014, p. 10)
データの捏造や改ざんは、故意におこなった場合だけでなく、過失によるものも不正行為として認定されうることに注意。
文献を特定するのに必要な情報を「書誌情報」(bibliographical information) という:
書誌情報の書き並べ方には様々な流儀がある (学問分野によってちがう)。この授業では、必要な情報が書いてあればいいので、具体的にどう書くかは、適当な書籍・論文等を見てまねるとよい。
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