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田中重人 (東北大学文学部准教授)
2020-12-04
現代日本学演習IV「調査的面接の基礎」
第6講 分析
[配布資料PDF版]
- [テーマ]
トランスクリプトの読みかたと面接内容の分析方法
課題
自分のトランスクリプトを読んで、つぎの箇所に印をつける。
- おもしろいところ、興味を引く発言
- 意味のよくわからないところや、解釈が複数ありえるところ
自分の設定した仮説にこだわらず、トランスクリプトの内容を虚心坦懐に見ること。
印をつけた部分について、他の受講者と意見交換する。
「分析」(analysis) とは
- 狭い意味では、要素にわけてそれらの性質や機能をあきらかにすること
- 広い意味では、要素がどのように組み合わさって全体を構成しているかについてあきらかにすること(総合=synthesis)をふくむ
後者のためには、要素をまず特定しなければならない。最終的には両方が必要になる(→木と森を両方見る)が、先に要素を分解しておく(→木だけを見る)
分析の方向性
- トランスクリプトをそのまま読み、直感によって「面白そうなこと」を抽出する
- 細かい「部分」をまず抽出し、文脈から切り離して分類あるいはコードをあたえる (KJ法、GTAなど)
- (コンピュータによる語の分割・分類と統計分析)
この授業ではとりあえず最初の方法で
解釈において気をつけること
要素を抽出するときは直感を信頼すること。
そのうえで、抽出した要素について多角的に解釈する。
- 文脈と意味
- トランスクリプトに書いてあることをそのままストレートに受け取っていいとは限らない。思い違い、嘘、謙遜、誇張、皮肉、冗談、聞き違いなど、さまざまな可能性を考えること
- 面接時の記憶を思い出しながら考える。文字にはあらわれない口調、表情、ジェスチャーなども重要。必要なら当時のメモや録音を参照する。
- 参考:
知念渉 (2014)「「貧困家族であること」のリアリティ: 記述の実践に着目して」『家族社会学研究』26(2), pp. 102--113. {DOI:10.4234/jjoffamilysociology.26.102}
総合と比較
要素をある程度抽出したら、その人の話の全体がどう構成されているかを把握する
- 要素同士の関連を見る:補強、矛盾、繰り返し、おなじ事実についての違う記述など
- 話の全体的な構成と、態度や口調の推移
- 個々の要素を念頭に置きながら、話の全容や対象者の人物像などをイメージする(かなりの集中力を要する)
複数の対象者のトランスクリプトを比較する:
- あらかじめ注目する項目が決まっている場合は、それにしたがって分類する(表にまとめるとよい)
- 複数の対象者のあいだでおなじことを言っている(または、おなじことについて、違うことを言っている)部分を探す。本当に「おなじ」(または「違う」)といえるか、よく考えること。自分で考えた解釈について、他の解釈がありえないかを、意識的に考えてみるとよい。
論文やレポートにおいては、
どう批判的に読んでもこれ以外の解釈はありえない
というレベルの頑健さ(を裏付ける論証)が必要である。
その他の注意点
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