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田中重人 (東北大学文学部准教授) 2021-01-08

現代日本学演習V「実践的統計分析」

第11講 疑似相関と媒介効果


[配布資料PDF版]
[テーマ] 回帰分析の結果を解釈する一般的な手順

独立変数の「効果」をどう読むか

疑似相関

X1 が X2 と Y の両方に影響をもたらしているが、X2 は Y に対しては影響力を持たない場合を考える


        X1 → X2
        X1 → Y
        X2    Y

このとき、X1 を無視して X2 と Y だけの関連を分析すると、 X2 が Y に対して影響を与えているように見えるので、因果関係を見誤ることがある。このような現象を「疑似相関」という。

媒介効果

X1 によって X2 が決まり、それによって Y が影響を受けるという因果関係を考える。

X1 → X2 → Y

このとき、X1 は Y に 直接 影響を与えているのではなく、X2 が「媒介効果」をもたらしていることになる。

直接効果

以上のようなことを考えながら、独立変数間の関連と、従属変数に対する直接的な効果を同時に把握する。

例題: 前回宿題の、3つの回帰分析の結果から、3変数間のどこに「直接効果」「媒介効果」「疑似相関」がみられるかを考える。

モデルの評価と係数の検定

モデル全体の評価

一般線形モデルのデータに対するあてはまりのよさをあらわすのが「決定係数」 R2 である。決定係数は、分散分析でいう「相関比」ηの2乗に相当するので、平方根をとれば、ηと同様の感覚で、「そのモデルによって、従属変数がどの程度説明できているか」を評価できる。これは、回帰分析では「重相関係数」と呼ばれ、 R であらわす。

PSPPが出力する「分散分析」表では、「母集団においては決定係数がゼロである」(= どの独立変数も、従属変数に対して効果を持たない) という帰無仮説について検定を行った結果が表示される (「有意水準」の欄)。この結果が有意でなければ、モデル全体について、説明力があるとはいえないことになる。

係数の推定値

決定係数が有意であれば、モデル内の各独立変数の効果について解釈していく。

各変数にかかる係数については、「係数」の表に、95%信頼区間が表示される。このなかにゼロが含まれているかどうかで、5%水準で有意な効果があるかどうかを判断できる (「有意水準」の列をみて判断してもよい)。


欠損値処理とケース数

回帰分析をふくめ、多変量解析では、投入したすべての変数についてひとつも欠損値のないケースだけを分析に使う。このような欠損値処理方法を、「表単位」(listwise) の欠損値除去という。

この処理の結果として、多くの変数を投入すると、それだけケース数が小さくなるので注意。


課題

自分の興味のある分野で、「媒介効果」と「疑似相関」の例をひとつずつ考えよ。教科書168--169ページも参照。


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