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田中重人 (東北大学文学部准教授)
2021-10-15
現代日本学演習V「実践的統計分析」
第3講 統計的検定と検定力
[配布資料PDF版]
- [テーマ]
区間推定、統計的検定と検定力、サンプルサイズ
臨界値と標準誤差
信頼区間を決める式は、「臨界値」(critical value) と「標準誤差」(standard error) のふたつの成分からなる。
臨界値はその統計的推測で前提とする確率の理論分布による。
- 信頼率 (あるいは危険率または有意水準) に応じて決まる
- 「自由度」(degree of freedom: DF) をもつ理論分布の場合は、標本規模やカテゴリ数などで自由度が変わり、それによって臨界値が変わる
標準誤差はさらにふたつの成分にわかれる
このため、信頼区間はつぎの性質を持つ:
- 信頼率を上げる (=危険率を下げる) と広くなる
- 標本規模が大きいと狭くなる (標準誤差が小さくなり、自由度が大きくなる)
- 標本の散布度が大きいと広くなる (標準誤差が大きくなる)
- カテゴリ数が多いと広くなる (クロス表や分散分析の場合)
- 例題1:
適当な変数 (間隔尺度とみなせるもの) について平均値の信頼区間を求め、標準偏差と標本規模をあてはめて検算してみる
- 例題2:
信頼区間の幅を半分にするには、標本規模を何倍にする必要があるか (自由度の変化は無視してよい)
- 例題3:
標本規模を 2 → 4 → 8 → 16 のように増やした場合、信頼区間の幅はどのように変化するか (t 分布の自由度をふくめて考慮する)
平均値の差の推定
ふたつのグループで別々に信頼区間を求めた場合:
- 信頼区間が重なっていなければ、差があると結論できる
- 信頼区間が重なっていれば、差があるかの判断は困難 (「同時分布」を考慮しなければならない)
通常は、「グループ間の平均値の差」について、母集団における値の信頼区間を求める方法をとる。→ 前期第11講
統計的検定
復習:
- 平均値の差の検定の方法 (数式とPSPPコマンド)
- 「臨界値」はどうやって計算するか
- 「有意確率」の解釈
- 「有意な差がある」「有意な差がない」ことの意味
カイ2乗分布とF分布
推測統計手法で正規分布を使った推定・検定をおこなうことはあまり多くない。よく使うのは、正規分布を変形した t 分布、χ2分布、F分布である。いずれも「自由度」(degree of freedom: DF) と呼ばれるパラメータを持ち、それによって形が変わる。
- t 分布:
DFをひとつ持つ (DF = ケース数 − 1)。正規分布に似た形をしているが、ちょっと幅が広い。自由度が増えると正規分布に接近していき、およそ DF>200 で標準正規分布とほぼ同じものになる。平均と分散の両方を推定・検定する場合に使う。
- χ2 分布:
クロス表の独立性の検定で使う。DFによって形が変わる (DFは行・列のカテゴリ数からそれぞれ1を引いて求める)
- F 分布:
分散分析 (η=0 を帰無仮説とした検定) で使う。DFをふたつ持つ (カテゴリ数−1 と ケース数−1)
標準正規分布に従う変数の2乗は、DF = 1の χ2 分布に従う。
t 分布に従う変数の2乗は、第1DF = 1 の F 分布に従う。
検定力
「検定力」(power of a statistical test) とは…… 母集団における一定の大きさの関連をどれくらいの危険率で検出できるか
- →
標本の規模 (=ケース数) できまる
- →
○○ の差を危険率 xx% で検出するには、どれくらいのケース数が必要か?
信頼区間の幅がどれくらいになるかを、標本の規模を変化させて計算してみるとよい。
課題
検定力について、つぎの計算をせよ
- 比率の信頼区間の幅を10%にするにはどれくらいのケース数が必要か? 5% なら?
- SD=1 である変数について、人数の等しいふたつのグループ間で平均値の差の区間推定をおこなう場合、信頼区間の幅を x 以下にするには、どれくらいのケース数が必要か。 x の値を適当に設定して計算せよ。また、SD=0.5 の場合、SD=2 の場合はそれぞれどのようになるか。
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