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田中重人 (東北大学文学部教授) 2024-01-05

現代日本学基礎講読II「論文作成の基礎」

第11講 文献参照の方法


[配布資料PDF版]
[テーマ] 文献参照の目的、方法、種類を理解する

課題

  1. 作成してきた文献表を受講者同士でチェックする
  2. 配布資料を読み、文献引用の方法について理解する

文献引用の目的

出典の明示
読者が原典を入手して検討できるようにする
文献の紹介

つぎの事項は引用不要

一般的な常識や学問上の基礎知識
データの確認法が自明の場合

根拠や出典に関する疑問を感じさせる事柄を述べるときは、かならず出典を明示する


文献引用の種類

直接引用: (狭義の「引用」: quotation)原典の文章をそのまま書き写す。「インライン引用」と「ブロック引用」がある。
間接引用 (paraphrase): 原典の文章を変形/要約して示す。
参照 (reference): 原典の文章を示すのではなく、内容やデータなどを紹介するのみ。

いずれの場合も、引用の範囲がどこからどこまでかをはっきりさせること。また、出典を明示して、読者が確認できるようにしておかなければならない。


直接引用

インライン引用: 引用範囲をかぎ括弧「」でくくる。引用する文章が比較的短い場合に使う。
ブロック引用: 引用範囲の前後に空行を入れ、字下げして「ブロック」としてあつかう(「」を使わない)。長い文章 (4行以上?) を引用する場合に使う。

これらの形式で引用する場合は、一字一句たがえず正確に写さなければならない。

ただし、つぎの場合は例外。

  1. 句読点の種類を本文とそろえる場合
  2. 縦書き/横書きの変換にともなう漢数字/アラビア数字の変換
  3. 原典の文字装飾や振り仮名を省略する場合

これら以外の場合は、原典どおり、正確に書き写す。


間接引用

原典の文章そのままではなく、変形/要約して示す場合を「間接引用」と呼ぶ。直接引用とはちがって、引用範囲を示す記号は使用せず、文章の中に織り込んでしまう。


脚注方式による出典表示

引用部分直後に、脚注のかたちで書誌情報を示す。

おなじ文献を複数回引用する場合には、「同上」「伊藤前掲書」などのように書く。加筆したときに間違いを起こしやすいので注意。

その引用部分や文献について何か説明を付け加えてもよい。


その他の出典表示方式

番号方式

引用部分の直後に番号を付ける。レポート末尾の文献一覧に、番号順に文献をならべ、それと照合すれば書誌情報がわかるようにしておく。

この研究によれば「……」(1) である。

この番号は、注の番号とはとは別につける。何度も出てくる文献については、おなじ番号を書く。

著者年号方式による出典表示

通常、引用部分の直後に(著者,出版年,ページ)の形式で出典を表示する。別紙の文例を参照。

この研究によれば「……」(伊藤,1998,p. 75)である。

著者名を文中に入れて不自然でない場合は、著者(出版年,ページ)の形式で次のように書いてもいい:

伊藤(1998, p. 75)は「……」と述べている。

単一ページの場合は p. 複数ページの場合は pp. をつけること。論文末尾の「文献」セクションと照合すれば書誌情報がわかるようにしておく。

その他


「孫引き」の問題

参考にした文献中で引用されている文献を参照したい場合は、 その原典にさかのぼって確認するのが原則 である。もちろん、原典が入手困難であったり、自分が読めない言語で書かれている場合などは、確認できないこともあるが、それ以外の場合には、必ず原典にあたること。

「文献」セクションは、自分が責任を持てる情報源を列挙するものである。原典に直接あたらなかった場合は、その原典を「文献」セクションに載せてはならない。

たとえば、論文Bのなかで論文Aの内容が紹介されているとする。その内容を引用したいが、もとの論文Aが入手できない。このような場合は、つぎのようにする。


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