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田中重人 (東北大学文学部教授)
2024-01-19
文献引用のルールを守ることには、倫理的な観点からみてどのような意味があるか考えよ。
文章を書く=情報の流布 → 他人の利害との衝突
学問の世界では、「誰が最初に考えたか (または発見/発明したか)」ということに非常に高い価値が置かれている。 第1考案者 (または発見/発明者) は、そのアイデアや発見について「優先権」(priority) を持つ。
優先権は、著作権とはちがって、時間がたっても消滅せず、譲渡・相続不可能である。また、引用するに当たって当事者への連絡・許可は不要である。
大学のレポートにおけるplagiarismは、筆記試験におけるカンニングと同様の不正行為とみなされる。
経済的利益を保護するために、さまざまな「知的所有権」が設定されている:特許権/意匠権/商標権/実用新案権 など。これらはいずれも、 経済的利害 がなければ問題にならない。
これに対して、著作権 (copyright) の侵害は、経済的利害がなくても問題になりうる。 (→「版権」は旧称)
著作権者は著作物について種々の権利を持つ
著作物とは、「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条) をいう。たとえば文章/音楽/舞踊/美術/建築/図面/映画/写真/プログラムなど (著作権法10条) がこれにあたる。アイディアやデータそのものではなく、それらの表現されたかたちが保護の対象になる。
公表された著作物から通常の文章だけを引用する場合の 許容範囲 (教科書p. 165 に田中加筆)
文章以外の引用の場合は、つぎのようにする
名誉やプライバシーの侵害が許容される例外的な条件は、次のふたつ (刑法230条の2第1項ほか)。
ただし、つぎの場合は許容基準があまくなる。
公表前に十分な準備を
許可のないまま公表せざるを得ないこともあるが、相応の覚悟が必要である。
マイノリティに対する蔑視表現、あるいは属性に基づく固定的イメージ (stereotype) を助長する表現に注意すること。
こうした表現が問題になるかどうかは文脈による。自分の文章がどのような派生的効果を持つか、読者によってどのように受け取られる可能性があるか、よく考えること。
近年、研究不正を防止するためのガイドラインが整備されてきており、大学や研究機関には、トラブルを防ぐための教育が義務付けられるようになってきている
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