[Previous page]
[Next page]
http://tsigeto.info/2025/family/f250723.html
田中重人 (東北大学文学部教授)
2025-07-23
現代日本学各論I/現代日本学社会分析特論I「現代日本における家族と人口」
講義全体のまとめ
[配布資料PDF版]
- [テーマ]
授業全体について復習とまとめ
前回授業への補足
論点
- 行政用語の意味変容
- 行政用語から借用した専門用語
- 言及対象の拡大と歴史的範囲の縮小 →人口転換の第2局面だけを指す用法が主流に
- 人口現象の他側面 (死亡や地域移動) の捨象 →人口減少に関連する諸現象をすべて「少子化」と呼ぶようになる
- 若者への批判的視線
戦後日本における出生力の変動
大きく5つの期間に区分できる
- --1950年代前半:
(第一の) 人口転換――出生力・死亡率がともに低下して、純再生産率がほぼ1になる
- 1950年代後半--1970年代前半:
安定期――純再生産率がほぼ1で推移
- 1970年代後半--1980年代:
Below replacement fertility 第1期――純再生産率が1未満になるが、それは晩婚化に伴う一時的な現象と考えられていた
- 1990年代:
Below replacement fertility 第2期――未婚率の増加が長期的問題として認識されるが、出生力の低下の主因は結婚の減少と認識されていた (結婚した人は平均2人程度の子供を持つ)
- 2000年以降:
Below replacement fertility 第3期――結婚した人の平均子供数も減少していることが共通認識に。一方、TFRは若干上昇し、その後低下している。
言説の変遷
この間の代表的な言説は、人口統計にあらわれた変動を少し遅れて反映している。
- 研究学説の上書き機能 (古い知識は捨てられる)
- 政治的言説の累積性 (古い知識はそのままで、新しい知識が付け加えられていく) →過去の各時期の用法や学説の混在
- 過去の記録・記憶や、統計を解釈するための基礎的な知識はあまり共有されていない
社会の自己認識と社会変動
合理的な政策形成モデルでは、行為主体 (たとえば政府) が収集した統計を精確に分析し、適切な政策を立案し、実施した結果を評価して修正する。
- PDCA: Plan, Do, Check, Act
- EBPM: Evidence-Based Policy Making
しかし実際には、政策形成過程は非合理であることが多い。
- 政策は政治的な過程を通じて創られるので、統計やその分析結果なども、政治的な勢力争いで使われる資源の一部とみなすことができる (→資源動員論)
- その過程で参照されるのは分析結果それ自体 (コンピュータプログラムやその出力) ではなく、それを切り貼りして書かれた論文やその要約、一般向けプレスリリース、紹介記事、いわゆる「ポンチ絵」などである (→言説の介在)
この授業で取り上げたこと
日本の「家族」に関する多面的な理解
私たちが「なんとなく知っている」事柄について
情報の調べかた
- 法律関係情報の探索と解釈
- 公的統計の利用
- 出版資料
ポイント
歴史の重要性
- 伝統的な家族制度とその変化
- 近代的法制度による統一の過程
近代化による収斂と差異
- 人口転換
- 家族の機能縮小
- 福祉国家
- タイミングとスピードのちがい
補足
第8講
に関して
- 現代の
日本の家族制度は、夫婦家族制か? 直系家族制か?
- 家族の機能が縮小してしまえば、大した問題ではない? (個人が選択できる問題?)
- 長期的にみて、世界の家族制度は収斂していくのか? (核家族化命題)
第11講
に関して
- 生活保障システムは家族制度から独立できるか?
- 家族制度と不平等問題
- 国民国家のメンバーシップ問題
- 福祉国家内部の格差と地域存続問題
この授業のインデックス
前回の授業
TANAKA Sigeto
History of this page:
- 2025-04-07 : Created
- 2025-07-22 : Revision
This page is monolingual in Japanese (encoded in accordance with MS-Kanji: "Shift JIS").
Generated 2025-07-22 20:18 +0900 with
Plain2.
Copyright (c) 2025
TANAKA Sigeto