田中 重人 <http://www.sal.tohoku.ac.jp/~tsigeto/>東北大学 文学部 オープンキャンパス2012 公開講義 (2012-07-30)
(東北大学 文学部)
2012年オープンキャンパス (東北大学全体の説明)
2012年オープンキャンパス (文学部の説明)
[内容詳細へ]
[内容詳細へ]
専門は社会学。主として、大規模な社会調査データを利用した統計的分析をおこなっている。参加している主要な調査として、 「社会階層と社会移動」(SSM) 全国調査 、 日本家族社会学会「全国家族調査」(NFRJ) など。
東北大学文学部では、 日本語教育学専修 に所属。「現代日本論」担当。
なぜ「日本語教育学」で社会学なのか?
資源を多く入手できる人とそうでない人がいる状態を「不平等」という。この状態を善悪という観点から評価する場合にしばしば使われるのが、その不平等は「機会の不平等」かどうかという基準である。これは、その不平等が生じている原因によって、「良い不平等」と「悪い不平等」を区分するということを意味する。
どのような原因によるものを「良い不平等」「悪い不平等」とみなすかには、論者によって非常に大きな幅がある。そのことが、「機会の (不) 平等」概念を理解するのをむずかしくしている。
現在の日本では (そして世界のほとんどの「先進社会」においては)、性別によって生じる不平等は「悪い不平等」である、という社会的な合意が存在する。
近代ヨーロッパにおける啓蒙思想→市民革命を支える核のひとつが「基本的人権」である。しかし、それが成立した当初の「人権」の具体的内容は、現在の視点から見ればはなはだ不十分なものであった
今日の私たちが知っている「人権」とは、このような原初的な「人権」を核としながら、大幅にその内容を書き換えて形成されてきたものである。
このような具体的な状況 (たとえば「平等」概念の20世紀における拡張) は、抽象的なレベルではどのように表現できるか。
いったん抽象的なレベルに引き上げて議論することで、他の類似の現象への応用・比較が可能になる。
私たちが従わなければならない「ルール」としてどういうものがあるか?
「人権」の尊重は、近代社会の重要な特徴のひとつ。そこで要求される「人権」の水準は、その成立当初と比較して、大幅に引き上げられてきた。特に、20世紀後半において、国際的な枠組 (国際連合、種々の国際機関、多国間条約) によってその実現が図られてきた。
「人権」概念は、当初は国家 (=正当な暴力を独占する政治組織) からの個人の自由のみを掲げていた。平等権に関しては、国家が定める「法」のなかで個人が平等に扱われているか (=法の下の平等) が主要な問題であった。
しかし、国家以外にも権力を行使する主体は存在するから、自由に任せておいては平等を実現することができない。そこで、国家は、平等を実現するために私的な領域に積極的に介入する義務があるという発想が出てくる → 広義の「ポジティブ・アクション」と呼ばれることがある。
女性差別撤廃条約 第5条は、「男女の定型化された役割に基づく偏見及び慣習その他あらゆる慣行の撤廃を実現するため、男女の社会的及び文化的な行動様式を修正する」ことを締約国に義務付けている。
社会は内部で互いに影響しあうシステムであるため、部分的な領域 (たとえば、労働・家族・医療・教育など) 別に対応を考えたのでは、うまく動かない。つまり、「縦割り行政」ではうまくいかないので、社会全体を見渡して、平等が実現できるための仕組みを考える必要がある。
国際的な動向
日本国内の動向
日本国憲法 <http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S21/S21KE000.html>
第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約 <http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinshu/conv_j.html>
第1条 1 この条約において、「人種差別」とは、人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づくあらゆる区別、排除、制限又は優先であって、政治的、経済的、社会的、文化的その他のあらゆる公的生活の分野における平等の立場での人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを妨げ又は害する目的又は効果を有するものをいう。 2 この条約は、締約国が市民と市民でない者との間に設ける区別、排除、制限又は優先については、適用しない。 3 この条約のいかなる規定も、国籍、市民権又は帰化に関する締約国の法規に何ら影響を及ぼすものと解してはならない。ただし、これらに関する法規は、いかなる特定の民族に対しても差別を設けていないことを条件とする。 4 〔……〕
国籍法 <http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25HO147.html>
第2条 子は、次の場合には、日本国民とする。 (1) 出生の時に父又は母が日本国民であるとき。 (2) 出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であつたとき。 (3) 日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないとき。 第4条 日本国民でない者(以下「外国人」という。)は、帰化によつて、日本の国籍を取得することができる。〔……〕 第5条 法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可することができない。 (1) 引き続き五年以上日本に住所を有すること。 (2) 二十歳以上で本国法によつて行為能力を有すること。 (3) 素行が善良であること。 (4) 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができること。 (5) 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。 〔……〕
女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約 <http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/josi/3b_001.html>
第三条 締約国は、あらゆる分野、特に、政治的、社会的、経済的及び文化的分野において、女子に対して男子との平等を基礎として人権及び基本的自由を行使し及び享有することを保障することを目的として、女子の完全な能力開発及び向上を確保するためのすべての適当な措置(立法を含む。)をとる。 第五条 締約国は、次の目的のためのすべての適当な措置をとる。 (a) 両性のいずれかの劣等性若しくは優越性の観念又は男女の定型化された役割に基づく偏見及び慣習その他あらゆる慣行の撤廃を実現するため、男女の社会的及び文化的な行動様式を修正すること。 (b) 〔……〕
男女共同参画社会基本法 <http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H11/H11HO078.html>
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 一 男女共同参画社会の形成 男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会を形成することをいう。 二 〔……〕 第四条 男女共同参画社会の形成に当たっては、社会における制度又は慣行が、性別による固定的な役割分担等を反映して、男女の社会における活動の選択に対して中立でない影響を及ぼすことにより、男女共同参画社会の形成を阻害する要因となるおそれがあることにかんがみ、社会における制度又は慣行が男女の社会における活動の選択に対して及ぼす影響をできる限り中立なものとするように配慮されなければならない。
Copyright (c) 2012 TANAKA Sigeto
Address: http://www.sal.tohoku.ac.jp/~tsigeto/office.htmlHistory of this page:
This page contains Japanese encoded in accordance with MS-Kanji: "Shift JIS".