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家事専従者の労働供給の可能性

家事時間量分布に基づく推計
田中 重人 (http://www.sal.tohoku.ac.jp/~tsigeto/)
『日本労働研究雑誌』 493号: 4-14, 78頁 (2001年8月) ISSN 0916-3808。
特集:専業主婦と労働市場

要旨

NHK放送文化研究所「国民生活時間調査」の「家庭婦人」の家事の時間量分布のデータをもとに、 家事専従者の労働供給の可能性を時間タームで推計する。 手続きは、適当な基準時間を設定して、家事労働時間がその基準時間を下回る場合に その分だけ労働供給を引き出せる、とするものである。 結果からえた知見は、家事専従者の労働供給の可能性は存在するけれども、その時間量は、 将来予測される生産年齢人口比率の低下による労働供給不足を補うほどの水準には達しないということである。


[論文全文] (日本労働研究機構 論文データベース 内)
[図1 (p.8) の元データ] タブ区切りテキストファイル

正誤表

つぎのあやまりがあります:
[p. 4 左列 下から4-5行目]

「14歳未満」→「14歳以下」

[p. 9 右列 下から6行目]

式 (3) の総和記号のインデックス ck はイタリック

[p. 14 右列 8-9行目]

「総務省統計局 (n.d.)」と 「総務省統計局 (2001)」が入れ替わっている。 WWW文書のほうが n.d.

そのほか、この特集の解題 (p. 2 右側 2-3行目) に「4分の3」とありますが、正しくは「55%」です。 最初に提出した原稿でいいかげんな計算をしていて、初校前に正しい計算結果にさしかえたのですが、解題は古い原稿に基づいて書かれたようです。

特集タイトルについて

「専業主婦と労働市場」? なんとセンスのないタイトルをつけるんだ、という感じをもたれるかたもおおいでしょう。 わたしも、原稿の依頼をいただいたときに「そのタイトルはおかしい」と文句をいったのですが、結局そのままになってしまったようです。

このタイトルの問題は、

  1. gender-biased である
  2. 「主婦」という用語を社会学の通常の用法とはちがう意味でつかっている

という2点に集約されます。

わたしが文句をつけたというのは 1. に関してです。 家事と仕事にトレードオフ関係があるのは、男女をとわない現象なのに、どうして対象を女性にかぎってあつかわないといかんのでしょうか。 論文中にも書きましたが、家事専従者のなかに男性は2%、つまり50人にひとりくらいいるのです。 かれらを無視して論文をかけ、という原稿依頼をするのなら、その理由はきちんと説明してほしいものです。

ちなみに、数がすくないから、というのは理由になりません。

「主婦」の定義に関しても書きたいことはあるのですが、 あとで加筆することにします。

翻訳版

英語翻訳版が出版されました:


田中 重人 (http://www.sal.tohoku.ac.jp/~tsigeto/officej.html)

Created: 2001-08-26. Updated: 2008-02-11.