Book review: Nobutaka Fukuda (2016) Marriage and fertility behaviour in Japan

- Economic status and value orientation (Springer)
田中 重人 <http://tsigeto.info/17i>
(東北大学大学院文学研究科)
家族社会学研究. 29(1):97-98 (2017)
URI: {http://tsigeto.info/17i}

抜粋

本書は、日本における結婚と出生について、計量分析に基づいて論じたもので、6章からなる。第1章は、日本をふくむ先進国の人口の現状の簡単な説明。第2章は、人口転換に関する研究を整理し、結婚と出生に関する理論的枠組を提示する。第3章から第5章は実際のデータによる分析。第6章では分析結果をまとめ、理論的な含意の検討をおこなう。なお、第3, 4章では3年ごとのパネル調査「結婚と家族に関する国際比較調査」(JGGS) 第1-3回 (2004-2010年)、第5章では、国立社会保障・人口問題研究所による5年ごとのクロスセクション調査「全国家庭動向調査」(NSFJ) 第1-4回 (1993-2008年) を使っている。

本書第2章はまず1960年代後半以降の先進諸国におけるいわゆる「第2の人口転換」(second demographic transition: SDT) をとりあげる。著者によれば、SDTの様態には社会間のちがいが大きく、それを説明する理論に決定的といえるものがない。近代化にともない減少する死亡率と出生率の均衡という説明が文化的背景の異なる多様な社会に一貫して適用できる「第1の人口転換」とは、この点で大きくちがうという。

第2章の後半では、SDTを説明するふたつの理論体系――経済学と観念理論――が登場する。「経済学理論」(economic theory) は、物質的な便益の比較による目的合理的な行為として結婚や出生を説明できるという前提を持つ。これに対して、「観念理論」(ideational theory) は、人々の信じる価値や態度によって結婚・出生行動の変化を説明しようとする。第3章以降の分析では、経済学理論は所得や職業、観念理論は社会規範に関する意識変数によってそれぞれ代表される。

〔……〕

著者は、現代日本における結婚と出生は経済状況によってかなりの程度説明できると考えているようだ。一方で、人々の価値観の影響は限定的である。このことについて、著者は、日本社会の制度は高い同調性を要求するため、進歩的な価値観を持つ人もそれに適応せざるをえないのではないかと解釈している。また、最近のコーホートで保守的意識が弱まっているわけではないことから、SDTが個人主義化・多様化に牽引されるという仮説は日本では成り立たないのではないかとも述べる。

本書の分析結果は、既存の研究や私自身の観察に照らしてもおおむね納得いくものと思う。特に、所得が結婚には影響するが結婚後の出生には影響しないというのは興味深い。〔……〕

ただ、これらの分析結果は、理論的な観点にうまく接合できているとはいいがたい。まず、経済的/規範的な変数が効果を持つことと、その効果が経済学的/観念理論的なメカニズムを反映していることはおなじではない。〔……〕仮説を棄却した場合は、理論をどのように修正すればよいかフィードバックがほしいところである。〔……〕最後に、経済学理論と観念理論の間には、実はそれほど大きなへだたりはないのではないか。〔……〕環境の制約と自分自身の選好の両方をにらんで妥協しながら合理的に人生を決めていく人物像を想定している点で、経済学理論と観念理論は共通の土台を持つ。両者を統合し、検証可能な仮説を複数立ててデータによって検証する、地道なスタイルの研究戦略が生産的ではないだろうか。

文献

(1) FUKUDA Nobutaka, 2017, Marriage and fertility behaviour in Japan: Economic status and value orientation. Springer. {ISBN:9789811002922}


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