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作成:田中重人 (東北大学文学部准教授)
東北大学文学部 (2010年度) 現代日本論基礎講読「論文作成の基礎」
論文の文章では、おなじ概念は常におなじ言葉であらわす(いいかえてはいけない)。また、すこしでもちがいのある概念には、そのつどちがう用語をあてる。参照した文献中でこのルールが破られている場合でも、そのまま引用するのではなく、用語を統一したり、注釈を加えたりして、概念と用語の対応関係をあきらかにしておくこと。
真/偽の区別が意味を持つ命題であって、個人の主観から独立したもの
例:私は来週富士山に登る。 富士山には月見草が生えている。 つぎの授業は休講である。
事実は、究極的には、真であるか偽であるかのどちらかである。ただし実際には、さまざまな事情のために真偽がわからない場合がある。なお、真である事実を「真実」という。
個人の内面にしか存在しないもの(感情・価値・評価・思考・推測・意思・期待など)あるいは真/偽の区別が意味を持たない(判断基準が確立していない)命題
例:私は富士山に登りたい。 私は富士山が好きだ。 富士山には月見草がよく似合う。 富士山は高い山である。
発言や文章が存在する(した)かどうかは、真/偽を判定できるから「事実」である(その発言や文章の中身には関係ない)。
例:太宰治は『富岳百景』で「富士には、月見草がよく似合う」と書いた。
事実について思考/推量/評価しているという現象は「意見」である。
例:今後も高齢化は続くだろう。 つぎの授業は休講だろう。 太宰治は『富岳百景』で「富士には、月見草がよく似合う」と書いているらしい。
以上は教科書での区分である。別の理解の仕方としては、
と考えてもよい。
事実と意見はできるかぎりわける。セクションまたはパラグラフのレベルでわけておくのがのぞましい (cf. 実証研究の論文の基本形)。最低限、事実を記述する文には意見を混ぜないこと。
○○の効果を識別するため、対象者を2群にわけて分析をおこなった。 ↓ 対象者を2群にわけて分析をおこなった。これは○○の効果を識別するためである。
論文の文章においては、できるかぎり確実性の高い客観的な事実に基づいて意見を組み立てることが重要である。
事実についても意見についても、表現をぼかさず、はっきりと言い切ること (教科書 第6章)。
× ……といっても過言ではない。 × ……ではないかと考えられる。
推量の表現としては、「おそらく……である」や「……の可能性がある」などを使う。そのほか、確からしさの程度を異にするいろいろな表現があるので、よく吟味して使い分けること。推量の確からしさについて、具体的な根拠を示せればなおよい。
この授業で提出したパラグラフ作成課題と中間レポートをみなおして、今日の授業内容に照らして問題がないか点検する。問題になりそうな部分を抜き出して、どういう点で問題があるか、どう書き直せばよいかを書くこと。
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