毎月勤労統計調査問題における政府と専門家

田中 重人 <http://tsigeto.info/22y>
(東北大学)

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• URI: http://tsigeto.info/22y
• Title: 毎月勤労統計調査問題における政府と専門家: データに基づく批判の不在 || The government and experts on the scandal about the Monthly Labour Survey of Japan: Absence of data-based criticism
• Presenter: 田中 重人 || TANAKA Sigeto
• Conference: 第144回社会政策学会大会 || Japan Association for Social Policy Studies, the 144th (2022 Spring) Biannual Conference
• Location: Online
• Date: 2022-05-14
• Session: 自由論題【A】労働政策 (9:30-11:30)
• Language: Japanese
• OSF: http://osf.io/j7pn5/
• Academia.edu: https://www.academia.edu/78486947

Short URL: http://tsigeto.info/22y

OSF Project: https://osf.io/ekqp9/

Blog article: http://b.tsigeto.info/391

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Abstract

政策の合理性は、データと論理に基づく批判的コミュニケーションによって支えられる。そのようなコミュニケーションの担い手としては、政府、専門家、非専門家の3者がありうる。本研究では、2018年末に不正が発覚した厚生労働省「毎月勤労統計調査」について、2019年以降に独自のデータ分析による問題の告発があったケースを収集した。そうした告発は数としては少ないが、そのなかでは非専門家が無視できない役割を担ってきた。一方、専門家 (統計学者や経済学者等) の活動は不活発ないし非効果的であり、政府 (厚生労働省以外の部門) によるものは皆無であった。報告においては、これらのケースについて、どのようなデータに基づいてどのような問題が告発されたかを紹介するとともに、政府が政策立案に利用するデータについての効果的な批判的コミュニケーションを成立させる条件について考察する。

目次

1. 統計コミュニティとその役割

2. 毎月勤労統計調査問題

• 2.1. 問題の所在
• 2.2. 誤った再集計による過去データへの波及
• 2.3. 本稿の課題

3. 非専門家による指摘

• 3.1. 山田正夫の指摘
• 3.2. TATの指摘
• 3.3. 明石順平の指摘

4. 統計専門家の対応

• 4.1. 松本健太郎の記事
• 4.2. 日本統計学会「公的統計に関する臨時委員会報告書」
• 4.3. 田中 (2021) の指摘

5. 政府の対応

• 5.1. 厚生労働省
• 5.2. 特別監察委員会
• 5.3. 統計委員会
• 5.4. 厚生労働省の委員会など

6. 議論

図表

• 図表1. 毎月勤労統計調査の推計母集団労働者数 [(a) 30-99人規模事業所; (b) 500-999人規模事業所]
• 図表2. 2018年1月ベンチマーク更新直前の推計母集団労働者数：従来の公表値と再集計値の比較
• 図表3. 「きまって支給する給与」再集計による増分

文献

• 明石順平 (2019)『国家の統計破壊』集英社インターナショナル． {ISBN:9784797680386}
• 朝日新聞 (2018-12-28)「勤労統計、全数調査怠る　都内は約3分の1を抽出　ＧＤＰにも影響か　厚労省」『朝日新聞デジタル』． {https://www.asahi.com/articles/DA3S13831541.html}
• 佐藤正広 (2012)『帝国日本と統計調査』岩波書店． {ISBN:9784000099202}
• 田中重人 (2020)「毎月勤労統計調査の諸問題」『東北大学文学研究科研究年報』69: 210-168． {handle:10097/00127285}
• 田中重人 (2021-10-14) 「層間移動事業所と抽出率逆数：毎月勤労統計調査問題の死角」． {https://remcat.hatenadiary.jp/entry/20211014/samplingrate}
• TAT (2019-03-14)「話題の勤労統計調査を元のデータと再集計データで比較してみました！」 {https://myfrankblog.com/employment_statistics_data_analysis_/}
• 西日本新聞 (2018-09-12)「統計所得、過大に上昇　政府の手法変更が影響　専門家からは批判も」『西日本新聞ニュース』． {https://www.nishinippon.co.jp/item/n/448833/}
• 日本統計学会 (2019a) 「公的統計に関する臨時委員会報告書」(2019年6月5日付)． {https://www.jss.gr.jp/wp-content/uploads/kouteki_toukei_report_main.pdf}
• 日本統計学会 (2019b)「公的統計に関する臨時委員会報告書：資料編」(2019年6月5日付)． {https://www.jss.gr.jp/wp-content/uploads/kouteki_toukei_report_material.pdf}
• 松本健太郎 (2018-09-13)「「統計所得」問題を整理する: データリテラシーの無い西日本新聞を誰が叱るのか」 {https://note.com/jyaga0716/n/n239faa6e4159}
• 山下雅代・椿広計・飯島信也 (2019)「教育用標準データセット (SSDSE) による探究型統計教育の促進」『日本数学教育学会誌』101(3):40-47. {DOI:10.32296/jjsme.101.3_40}
• 山田正夫 (2019-04-22)「毎月勤労統計調査　再集計版の内部構造は怪しい」 {http://kagaku7g.g.dgdg.jp/mkt/mkt06sai.htm}

政府資料

[厚生労働省 2017] 厚生労働省 政策統括官付参事官付 雇用・賃金福祉統計室 (2017-11) 「毎月勤労統計調査における常用労働者の定義の変更について」． {https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/20171222_altered_definition_regular_employees_jan_h30.pdf}

[厚生労働省 2019a] 厚生労働省 (2019-01-11)「毎月勤労統計調査において全数調査するとしていたところを一部抽出調査で行っていたことについて」． {https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_03207.html}

[厚生労働省 2019b] 厚生労働省 (2019-07-22) 「厚生労働省統計改革ビジョン2019（仮称）有識者懇談会 第1回議事録」． {https://www.mhlw.go.jp/content/10700000/000534565.pdf}

[厚生労働省 2021] 厚生労働省 (2021)「毎月勤労統計：賃金データの見方: 平成30年1月に実施された標本交替等の影響を中心に」(2021年5月修正) {https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/maikin-20180927-01.pdf}

[統計委員会 第130回 議事録] 第130回統計委員会議事録 (2019-01-17) {https://www.soumu.go.jp/main_content/000622733.pdf}

[統計委員会 第132回 資料5-2] 厚生労働省 (2019-02-20)「毎月勤労統計について」 {http://www.soumu.go.jp/main_content/000601140.pdf}

[統計委員会 第134回 資料4-3] 厚生労働省 (2019-03-18)「毎月勤労統計調査について」． {http://www.soumu.go.jp/main_content/000607313.pdf}

[統計委員会 第135回 資料6-1] 厚生労働省 (2019-04-18)「毎月勤労統計調査について」．{http://www.soumu.go.jp/main_content/000615313.pdf}

[統計委員会 第135回 資料6-2] 厚生労働省 (2019-04-18)「「統計委員会の意見書についての審議結果を受けた厚生労働省への情報提供の要望」に対する回答」．{http://www.soumu.go.jp/main_content/000615414.pdf}

[統計委員会 第153回 資料7] 厚生労働省 (2020-07-31)「毎月勤労統計調査について」．{https://www.soumu.go.jp/main_content/000701014.pdf}

[特別監察委員会 2019] 毎月勤労統計調査等に関する特別監察委員会 (2019-01-22)「毎月勤労統計調査を巡る不適切な取扱いに係る事実関係とその評価等に関する報告書」．{https://www.mhlw.go.jp/content/10108000/000472506.pdf}

[WG 第3回 議事録] 厚生労働省 (2021) 第3回「毎月勤労統計調査の改善に関するワーキンググループ」議事録 (2021-11-05 開催)．{https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22422.html}

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データとプログラム：

• 政府統計の総合窓口 (e-Stat): 毎月勤労統計調査全国調査
• 「毎勤原表」からデータを抽出するPerlスクリプト (参照: {tsigeto:21q})
• 「毎勤原表」データを分析するRスクリプト (新旧統合版) (参照: {tsigeto:21s})
• 2004年1月〜2021年5月の「毎勤原表」(本系列および「時系列比較のための推計値」) から抽出したテキスト・データ (タブ区切り) (参照: {tsigeto:21q})
• 2018年1月旧サンプルの「毎勤原表」(本系列) から抽出したテキスト・データ (タブ区切り) (参照: {tsigeto:21q})
• 2007年10月〜2020年12月の「毎勤原表」(「従来の公表値」) から抽出したテキスト・データ (タブ区切り) (参照: {tsigeto:21s})

関連するサイトとページ：

• 社会政策学会 / 第144回大会
• 調査精度粉飾事件としての毎月勤労統計問題
• 毎月勤労統計調査の諸問題 (『東北大学文学研究科研究年報』69)
• 毎月勤労統計調査、今後のベンチマーク更新で大きなギャップ発生のおそれ (ブログ記事 2021年9月11日)
• 母集団労働者数推計の謎：毎月勤労統計調査とセンサスはなぜ乖離しているのか (ブログ記事 2021年9月20日)
• 毎月勤労統計調査、2018年の集計方法変更で何か間違えた模様 (ブログ記事 2021年10月9日)
• 層間移動事業所と抽出率逆数：毎月勤労統計調査問題の死角 (ブログ記事 2021年10月14日)
• 「毎月勤労統計調査の改善に関するワーキンググループ」参加者への手紙 (ブログ記事 2021年10月17日)
• 毎月勤労統計調査、抽出率逆数の扱いを2018年1月から改悪していたことが判明 (ブログ記事 2021年12月29日)
• 毎月勤労統計調査、不正な結果を是正したはずの2019年再集計値も間違っていた (ブログ記事 2022年1月2日)
• 統計委員会への手紙「毎月勤労統計調査で2018年1月から採用されている誤った推計法について」 (ブログ記事 2022年1月22日)
• そのほか、個人ブログ中の毎月勤労統計調査関連記事

東北大学 / 文学部 / 現代日本学 / 田中重人

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