『大阪大学人間科学部紀要』23: 169-183 (1997年)。 ISSN 0387-4427。太郎丸 博 (taroh@koka.ac.jp)
田中 重人 (tsigeto(AT)nik.sal.tohoku.ac.jp)
C. Ragin, 1987, The Comparative Method (Univ. of California Press) が提起した質的比較のブール代数分析法の多値変数データへの応用を試みる。 ブール代数分析は、本来、2値変数しか分析に投入できないという制約をもっていた。 本稿では、ブール代数分析のこの短所を改善し、3つ以上の値をとる多値変数を独立変数として 投入できるよう、ブール代数分析の拡張をおこなう。 通常の社会調査データでえられる多値変数では、2値変数と同様に相補則が成り立っているため、 従来のブール代数分析と同様の手続きが適用できる。 この拡張により、質的データの持つ複雑性を2値変数に切り下げてしまうという ブール代数分析の弱点が克服される。 さらに、従来便宜的に多値変数を投入するためにおこなわれてきたダミー変数モデルとの比較をおこなう。 ダミー変数モデルでは、n 値を持つ変数を n-1 個の2値変数の組み合わせで表現するため、 式が冗長になる。 またダミー変数モデルでは、論理的にありえない独立変数の組み合わせができてしまうので、 解釈がむずかしく、日常言語による理論的思考との接合が困難である。 これらのことから、拡張されたブール代数分析を用いるほうが、 単純さと解釈可能性の点でダミー変数モデルより優れていることを示す。
Created: 1998-03-31. Updated 2002-10-03. This page contains Japanese encoded in accordance with MS-KANJI ("Shift JIS").