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国民生活基礎調査分析結果 報告資料
田中 重人
<http://www.sal.tohoku.ac.jp/~tsigeto/13z.html>
(東北大学 文学研究科)
女性の生きづらさをみんなで考えよう:みえない貧困とジェンダー (2013-03-23 せんだい男女共同参画財団 エル・ソーラ仙台) (2013-03-23)
- URI:
{http://www.sal.tohoku.ac.jp/~tsigeto/13z.html}
- Short URL:
{http://tsigeto.info/13z}
- Blog entry:
{http://b.tsigeto.info/142}
- ※
報告書 (田中 2013 {tsigeto:13a}) 記載の「国民生活基礎調査」(2007) 分析結果について、要点を説明します。図・表の番号は報告書とおなじです。くわしい内容は、報告書をごらんください。
- ※
調査報告のあとのパネルディスカッション用の資料は {tsigeto:13z2} 参照。
[配布資料PDF]
[プロジェクタ投影資料PDF]
データと指標
厚生労働省「国民生活基礎調査」(2007) について:
- 無作為に世帯を抽出し、その世帯の全員を対象とする調査である
- 今回の分析の対象は、「所得票」調査に答えたもの:有効数5万人強
- 主要な調査項目: 性別、年齢、世帯構成、親族関係などのほか、調査前年(2006年)の所得、課税額、社会保険料の金額をそれぞれの種類別にたずねている(表1)。
- 世帯の全員について、所得から課税額と社会保険料を差し引いた金額を合計したものを「世帯可処分所得」という。これを世帯人数の平方根で割ったものが「等価可処分所得」
- データ全体の等価可処分所得の中央値が248万3377円。この中央値の半分(=124万1688円50銭)を下回る者の比率が「相対的貧困率」(16.0%)
慣習的に「相対的貧困率」と呼ぶが、この指標をそのまま「貧困」を表すものとして解釈するにはいろいろ問題がある。貧困に陥るリスクの高い層を推定してふるい分けるための簡便な指標と考えたほうがよい。
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実際の生活状況についての精密な調査が必要
この報告では、世帯の構成をつぎのように分類して使う (表2)。
- 単独世帯:
ひとりのみの世帯
- 夫婦家族世帯:
- ひとり親世帯:
- 父子世帯 (男性とその子供)
- 母子世帯 (女性とその子供)
- 拡大世帯:
- 夫婦と親 (夫婦、夫婦のどちらかの親(両親又は片親))
- 夫婦と親と子 (夫婦、その夫婦の子供、夫婦のどちらかの親(両親又は片親))
- その他 (上記のどれにも分類できない世帯)
性別と婚姻状況でみた高リスク層
性別、年齢別、婚姻状況によって相対的貧困率を計算したところ、次の人々の間で貧困リスクが高い (図4, 5)。
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図4. 相対的貧困率:性別と婚姻状況
高齢者の経済状況
東北地方の特徴:3世代(夫婦と親と子)の世帯が多く、単独世帯や夫婦のみ世帯が少ない(図14)。
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図 14. 高齢者 (65歳以上) の世帯類型
単独世帯で相対的貧困率が高い。特に、80歳以上の女性の相対的貧困率が高い (図16)。
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図 16. 高齢者 (65歳以上) の相対的貧困率:性・世帯類型・地域別
単独高齢者世帯の社会保障受給額を見ると、男女間で大きな差がある(男性のほうが高い)(図17)。
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図 17. 単独世帯 (55歳以上) の社会保障給付受給額
離別女性の経済状況
離別(無配偶)女性の年齢・世帯類型別にみると (図11)、若年の母子世帯、高齢の単身世帯で相対的貧困率が高い。これに対して、3世代 (子供夫婦および孫と同居) では相対的貧困率が低い。
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図 11. 離別女性の相対的貧困率:世帯類型別
未婚女性の経済状況
親と同居する未婚女性だけを取り出して分析する:
- 同居親の所得は、東北地方では、全国に比べて低い (図10)。
- 一方で、親同居未婚女性の世帯類型は、東北地方では「夫婦と子供」世帯の比率が低く、「夫婦と親と子」世帯(未婚の女性がその両親および祖父母と暮らしているケース)が多い (図9)。
- 結果として、親同居未婚女性の相対的貧困率は全国の数値と変わらない。
- 親の年齢別にみると、親同居未婚女性の相対的貧困率は、親が50代の場合は低いが、高齢になるにしたがって上昇する (図8)。
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図 10. 親同居未婚若年女性 (20-40歳) の親の可処分所得合計の分布
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図 9. 親同居未婚若年女性 (20-40歳) の世帯類型
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図 8. 親同居未婚若年女性 (20-40歳) の相対的貧困率: 親の年齢別
まとめ
- 貧困リスクは、結婚している場合に低く、結婚していない場合 (未婚・死別・離別) に高い
- 死別高齢者の貧困リスクは男女とも高く、特に女性のリスクが高い。社会保障制度の不足のため、セーフティ・ネットが十分に機能していない可能性がある。
- 離別にともなう貧困リスクは大きい。特に母子家庭の場合、リスクは非常に大きい。
- 未婚の場合、親族との同居によって生活水準を維持しているケースが多い。ただし親が高齢化すると、貧困リスクがあがる。
- 東北地方は全国平均より3世代同居率が高く、それが貧困リスクを抑えているる可能性がある
- 一方で、東北地方では単独世帯の貧困率が高い
文献
- 厚生労働省(2008)『国民生活基礎調査 平成19年』. {ISSN:09149600}
- 厚生労働省(2009)「相対的貧困率の公表について」(平成21年10月20日).
<http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/10/h1020-3.html>
- 田中重人 (2013)「国民生活基礎調査分析結果」『女性の生活状況及び社会的困難をめぐる事例調査』せんだい男女共同参画財団, 53−72ページ.{tsigeto:13a}
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