公共社会学と社会指標
田中 重人
<http://www.sal.tohoku.ac.jp/~tsigeto/15z.html>
(東北大学大学院文学研究科言語科学専攻日本語教育学専攻分野)
東北大学 文系4学部合同「クワトロセミナー」第4回 (2015-01-14)
[Slide PDF]
[PDF for print]
- URI: http://www.sal.tohoku.ac.jp/~tsigeto/15z.html
- Title: 公共社会学と社会指標
- Presenter: TANAKA Sigeto (田中 重人)
- Conference:
東北大学 文系4学部合同「クワトロセミナー」
第4回「統計学のネクスト・ステージ: 公共的社会科学における統計分析の実践と展開」
- Location: 東北大学 川内南キャンパス 文科系総合研究棟11階大会議室
- Date: 2015-01-14 (Wed.) 16:00 - 18:00
- Language: Japanese
「クワトロセミナー」URL:
http://www.tfc.tohoku.ac.jp/other-activities/quattro-seminars.html
他の報告者:尾野 嘉邦 (法学研究科) / 千木良 弘朗 (経済学研究科)
司会/討論者:三輪 哲 (教育学研究科)
プログラム [2015-01-18 加筆]:
- 田中 重人「公共社会学と社会指標」(下記)
- 千木良 弘朗「より高精度な将来の死亡率予測の提案」(参考: Chigira H + Yamamoto T (2009) "Forecasting in large cointegrated processes". Journal of Forecasting. 28(7):631-650. {DOI:10.1002/for.1076})
- 尾野 嘉邦「政治学における実証分析」(参考: Ono Y (2012) "Portfolio allocation as leadership strategy: intraparty bargaining in Japan". American Journal of Political Science. 56(3):553-567. {DOI:10.1111/j.1540-5907.2012.00586.x})
- 討論
- Short URL:
http://tsigeto.info/15z
- Blog article:
http://b.tsigeto.info/263
Abstract
公共的な議論への貢献をねらう研究、たとえば政策の提言や評価を目指す研究においては、公共的関心に応えるテーマ選択が重要です。公共的問題は多岐にわたりますから、研究テーマには多様性が必要です。また、時代の変化や研究の進展にあわせて新しいテーマを開拓しなければなりません。しかし実際には、少数の人気テーマに研究が集中する傾向があり、また既存の研究成果がテーマ選択に活かされない(たとえばすでに否定的な結果がでている政策についての否定的な分析結果が量産されつづける)現象もみられます。この報告では、公共的な研究テーマの多様性を確保するための方法について論じます。具体的には、(1) 従属変数の設定にあたっては、抽象的な価値基準に基づいて社会状態を評価する社会指標がえられるようにすること、(2) 独立変数の選定にあたっては、個々の行為主体のふるまいを指示する規範としてどのようなものがありうるかの考察を組み込むこと、という2点を提案します。これは、計量的な研究のプロセスに理論研究や言説分析の成果を取り入れる枠組であると同時に、より精緻な研究成果を同時代の公共的な関心に沿って流通させる手段を提供します。
Files
内容はほとんどおなじですが、一部が文章になっていたりグラフになっていたりします。
目次
- イントロダクション
- 研究テーマの決めかた
- 公共社会学
- 個人的研究史に当てはめると……
- まとめ
文献
著者への問い合わせ
リンク
イントロダクション
論文の「周辺」
今日とりあげるのは「問題」や「課題」に書くような内容のこと
ルール解説の規範性
現行の制度について解説することは何を意味するか
- カ変動詞の可能形は「来られる」 → ×「来れる」
- 都市的人間関係における儀礼的無関心
毒を食らわば皿まで
個人的研究史 (1993−)
- 女性の就業継続 (−2002)
- 男性の家事時間 (1999−2004)
- 等価世帯所得と離婚給付 (2004−)
- 人口政策と生活保持義務 (2013−)
就業継続率
結婚・出産・育児の時期に正規雇用を続ける割合
- 女性: 20%
- 男性:100%
- 時代による変化なし
(1985, 1995, 2005年 {SSM} 調査)
均等法、育休法、保育所の充実の効果はない。
女性の就業継続率が急増して男性においつく未来はありそうにない。
生活時間
- 女性:
仕事 ←→ 家事の間で調整
- 男性:
仕事 ←→ 余暇の間で調整
男性が家事のために仕事をやめるようなことも期待できない
等価世帯所得
- 男女の差は離別・死別の場合だけ
- 離婚経験者の男女格差は正規継続就業と子供の有無の差による →離婚給付でカバーできる
- 政府に支払い義務を課すことも?
(1999, 2004, 2009年 全国家族調査 {NFRJ})
ここまで個人的研究史
研究テーマの決めかた
好きなテーマを選びなさい
vs.
その研究に何の意義があるの?
因果分析の一般形
地位αにある行為主体が状態xを実現する確率は独立変数群βの関数である
P(x|α) = f(β)
- x:
状態
- α:
地位
こう考えると、研究テーマ決定問題は、左辺と右辺に分割できる
無数のテーマ候補
P(x|α) = f(β)
P(y|γ) = g(δ)
P(z|ε) = h(ζ)
……
- →
どれにする?
研究資源の配分
公共社会学
【社会に対する認識】学界←→公衆
【認識対象】社会的事実:P(x|α)=f(β)
「認識」には、事実についての認識と、それについての価値判断の両方を含む
PDCAサイクル
政策目標(P)→政策(D)→評価(C)→政策改善(A)→…
ダメならどうするか
- 政策目標そのものを入れ替えるには?
- 検討する政策の範囲の拡大→規範の変容可能性
イデオロギーと政策
抽象的な水準での議論に目を配りながら、具体的な目標や手段を考えなければならない。
個人的研究史に当てはめると……
WLB の効果
- 実態:
育児休業と育児支援が利用可能になっても、女性の就業継続率は男性と同等である (上記参照)
- 評価:
育児休業や育児支援では女性の就業継続率は男性と同等にはならない
(田中重人 (2008)「ライフスタイル中立的な平等政策へ」『ジェンダー法・政策研究叢書12』東北大学出版会. {http://tsigeto.info/08b})
この結果が確かなら、次に何を研究すればいい?
離婚給付
- 働き方が違っても同じ所得が保障されているなら「平等」
- 離婚給付における衡平性
- 問題:
衡平な清算額をどうやって決めるか
- 問題:
徴収するのは実際には困難
(Tanaka S (2013) "Gender gap in equivalent household income after divorce". A Quantitative Picture of Contemporary Japanese Families. Tohoku University Press. {ISBN:9784861632266})
「小子化対策」の派生的効果
- 問題:
再生産平等主義
- 問題:
生活保持義務
まとめ
Tips
- 従属変数 ← 社会指標
- 独立変数 ← 規範
- 探索の範囲を広く
公共的課題に計量分析を組み込む
- 具体性
- テスト
- 守備範囲の拡大
- 「想定外」を減らす
文献
- 田中 重人 (2008)「ライフスタイル中立的な平等政策へ: 両立政策は正当化できるか」『ジェンダー法・政策研究叢書12 男女共同参画のために: 政策提言』東北大学出版会. 283-301. {ISBN:9784861630736} {http://tsigeto.info/08b}
- 田中 重人 (2013)「Gender gap in equivalent household income after divorce」 ed.= 田中 重人『A Quantitative Picture of Contemporary Japanese Families』東北大学出版会. 321-350. {ISBN:9784861632266} {http://tsigeto.info/13d}
著者への問い合わせ
ご質問/ご意見をお寄せいただけると幸いです:
関連するサイトとページ
東北大学
/
文学部
/
日本語教育学
/
田中重人
History of this page:
- 2015-01-09:Created
- 2015-01-12:Revision
- 2015-01-18:Revision (program and links for referred papers)
This page contains Japanese characters encoded in accordance with MS-Kanji: "Shift JIS".
Generated 2015-01-18 21:26 +0900 with
Plain2.
Copyright (c) 2015
TANAKA Sigeto