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田中重人 (東北大学文学部教授) 2023-12-14

現代日本学各論III/現代日本学社会分析特論I「現代日本における家族と人口」

第9講 近代化にともなう社会変動


[配布資料PDF版]
[テーマ] 「近代」社会の性質と、そのなかでの家族の変動

前回の課題について

課題: 日本社会においては、明治以前とそれ以降でどのような変化があったか。特に、家族に関連する変化に重点を置いて説明せよ。

回答の例:

出題の意図としては、受講者の予備知識や関心の所在を探ることが目的なので、文献を探して根拠をもって論述することを求めていたわけではない。だから、自分の記憶や思い付きで書いてよい。

もちろん、文献を探して書いてもよいのだが、その場合は、 出典をきちんと書くこと。


家族の形態と前近代の社会制度

「親族」(=夫婦関係と親子関係による人的ネットワーク) を基礎とした社会制度は、人類社会に普遍的にみられる。しかし、その具体的なありようには大きな差異がある。 (親族関係を記述する用語については 第2講資料 を参照。)

親族のうち、どの範囲をひとつの集団とみなすかについてのルールは、おおまかに3種類に分けられる:

夫婦家族制 (conjugal family system): 夫婦と未婚の子がセット →結婚すると独立する
直系家族制 (stem family system): 各世代に一組の夫婦のみ →跡継ぎ以外は、結婚すると独立する
複合家族制 (joint family system): 各世代に複数の夫婦が共存する →傍系の親族を多数ふくむ大規模な集団

直系家族制と複合家族制をあわせて「拡大家族制」(extended family system) と呼ぶことがある。また、どの制度のもとでも、夫婦と未婚の子供はかならずひとつの集団に包含される。このため、夫婦と未婚の子供をまとめて「核家族」(nuclear family) と呼び、親族の基本的単位とみなすことが多い。


前近代の日本では?

「イエ」(家) を単位とする自治

イエ制度とは:

地域・階層によって具体的な制度には大きな相違があり、成立時期もさまざまである (成立していなかったところもある) ので注意 (平井 2008)。

明治民法の「家」制度では「家督」を直系・世襲制で継いでいくようになっているが、家が家業を直接経営したり、同族集団をつくれるようにはなっていなかった (「分家」の制度はある)。

おなじ血統に属する人々 (=氏族)、という意味でも「家」ということばを使う場合がある (川島 1955→2000)。この意味での「家」は生活の実態を持たず、しばしば観念としてしか存在しないものであるが、人々の帰属意識に強力な影響をあたえることがある。

前近代から近代へ

近代化 (modernization)

近代化する社会における前近代的セクターと近代的セクターの併存 (二重システム = dual system)

近代化が進展する途上を「前期近代」、社会のほぼ全体が近代化してしまったあとを「後期近代」と呼んで区別することがある。


「近代家族」とは

家族の機能縮小

近代以前の社会において家族が果たしてきた主要な社会的機能 (social function) としてはつぎのようなものがある。

近代化とともに、家族の機能は少なくなってきた (▼印のものが縮小)。この機能縮小の過程は、日本社会では、20世紀はじめごろから、都市部のサラリーマン層で進展した。日本社会全体にひろまるのは高度経済成長期 (1970年代ごろまでにほぼいきわたる)。

近代家族と家族問題

近代家族は、近代化に適応してできた家族制度である (山田 1994)。

他方、この制度にはさまざまな問題もある。「家族問題」とされる現象のほとんどは、近代家族の特徴に関係している


文献


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