田中 重人 <http://tsigeto.info/22x>第73回関西社会学会大会 (2022-05-29)
(東北大学)
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[関西社会学会 第73回大会] [プログラム]
新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) 対策では、感染者数データの解釈が重要な役割を果たす。このデータは、日本では保健所等による行政検査や積極的疫学調査の結果を集計して得られる。集計の過程が特殊ではあるが、一種の業務統計といえる。
保健所が感染者を全員把握し、健康管理できているなら、その時点で流行は終わる。もし流行が継続しているなら、把握されていない感染の連鎖があるということだ。このため、データが現実の感染状況を正確に捕捉できているとは期待できない。データ収集過程から発生する統計の偏りを検討して、背後にある真の感染状況を推測することが必須となる。
新型コロナウイルス感染症対策分科会は、2020年12月23日の文書 [1] で、感染源を特定できない症例のほとんどが飲食店での感染と仮定して、対策を訴えた。これは、飲食を介した感染連鎖が主要な経路であるにもかかわらず、ほとんど把握できていないという認識による。実際、同月のデータ [2] では「飲食関連」の「クラスター」(5人以上の集団感染) は1,664人しかいない。同月の新規感染者数85,891人 [3] の2%未満しかないのだが、本当はもっと多いのだ、というわけである。
だが、日本で最初に感染が拡大した2020年2-5月の「第1波」では、まったくちがうデータ解釈がなされていた。感染拡大の条件となる「クラスター」を効率よく発見していることになっていた [4] のだ。感染拡大に寄与する「急所」での感染は数え落としが少なく、データ中で相対的に過剰に代表されているものと見られていた。
半年ほどの間に、感染者数データの読みかたが180度転換したのである。この転換の理由は明示されていない。しかし、第1波以降の公的文書や専門家の発言を検討すると、その背景が見えてくる。
本報告では、(1) 集団感染の規模・性質と発見確率との関係の数理モデルに基づき、(2) 政府・専門家が警戒対象としてきた「クラスター」の意味内容の変化の検討を通して、日本のコロナ感染者数データの解釈の変化を後付ける。
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